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気象庁によると、今回の噴火は2023年10月21日頃に硫黄島の南岸数百メートルの沖合で始まったと見られています。
東京大学の研究チームは毎日新聞社機に同乗し、10月30日の12時20分〜12時35分頃に海底火山の噴火を実際に観察しました。
数分おきに垂直ジェットを伴うマグマ水蒸気爆発が発生し、ジェットの高さは最高50メートル以上に達していたとのこと。
時折、幅数メートルを超える岩塊を投出していたといいます。
そして噴火地点のすぐ北側で、主に岩塊と軽石からなる直径100メートル程度の新島が形成されていました。
(11月9日時点では陸地の長さがすでに300メートルに達しているという)
新島の画像はこちらのプレスリリースで公開されています。
東京大学の名誉教授で火山地質学者の中田節也(なかた・せつや)氏は「軽石の固まった小山ができて、それが今、島状に分布している」と説明。
また火山は現在、ほとんどが灰を噴出している状態ですが、「今後はマグマを噴出する噴火に変わっていき、それが続けば、溶岩が全体を覆って、島が波に浸食されずに残るというストーリーが考えられる」と中田氏は話しています。
一方で、火口の周辺には白くて大きな軽石が大量に浮遊しています。
軽石とは、多孔質で密度の小さい火山噴出物の一種で、これが大量に集まると「軽石いかだ」と呼ばれる塊状になって海を漂流します。
これを聞いて、2021年に沖縄諸島で起きた軽石被害を思い出す方もおられるでしょう。
この被害は同年8月13日に発生した「福徳岡ノ場(硫黄島の南南東約60キロ)」という海底火山の噴火が原因となったものです。
この噴火は日本国内で戦後最大級の規模とされ、噴煙の高さは約1万7000メートルにも達しました。
そして10月以降、噴火によって発生した大量の軽石が、海流に乗って1万キロ以上も離れた沖縄諸島に流れ着いたのです。
このとき、港に押し寄せた軽石により、地元の漁師が船を出せなくなって漁に支障をきたしました。
では、今回の硫黄島沖の噴火により同様の被害は出ないのでしょうか?
中田氏は次のように述べています。
「硫黄島から軽石が流れた場合には、まず沖縄に向かい、それから黒潮に乗って、日本の近海まで来ますので、小規模に届くとは思います。
しかし、噴火はこれから溶岩を噴出するステージに入るので、軽石の生産は比較的少なくなると予想され、漁業に影響が出ることもほとんどないでしょう」
どうやら軽石による被害はあまり心配なさそうです。
また火山が溶岩を噴出し続ければ、その分だけ島の大きさも拡大していくと思われます。
新島は一体どこまで成長していくのか、今後も注目が集まります。
参考文献
2023年10月30日硫黄島沖噴火と新島形成について https://www.eri.u-tokyo.ac.jp/eq/20249/ New Island Emerges Off Japan After Powerful Underwater Volcano Eruption https://www.sciencealert.com/new-island-emerges-off-japan-after-powerful-underwater-volcano-eruption Underwater volcanic eruption gives birth to new island in the Pacific https://www.livescience.com/planet-earth/volcanos/underwater-volcanic-eruption-gives-birth-to-new-island-in-the-pacific