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実際のところ先進国では、成人は毎日平均9~10時間座って過ごしており、そのほとんどは勤務時間中です。
そのため多くの人は、仕事前や仕事後にいくらかの運動を行うことで、なるべく健康でいたいと考えます。
そしてこれまでに、座りっぱなしの人の運動量と健康を分析した研究がいくつも行われてきました。
例えば、下記の2020年の研究では「1日40分以上の中程度以上の身体活動が必要」だと報告されています。
中程度以上の身体活動には、イヌの散歩、階段の昇降、子供と遊ぶこと、速めのウォーキング、軽めの自重トレーニング、バレーボールなどが含まれます。
無理ではないレベルですが、毎日ヘトヘトになるまで働いている人は「ハードルが高い」と思うかもしれません。
しかしサーゲルブ氏の新しい研究では、もっと短い時間の身体活動でも病気や死亡のリスクを低減できると報告されています。
(※これらの研究で述べられる死亡リスクとは、個々の人々が一定期間中に死亡する確率のことです。今回研究に使用されたデータの中央値は5.2年です)
この研究では、ノルウェーの「トロムソ研究(Tromsø Study:2015~2016年)」と「ノルウェー全国身体活動調査(NNPAS:2008~2009年)」、スウェーデンの「健康老化イニシアチブ(HAI:2012~2019年)」、アメリカの「アメリカ国民健康栄養調査(NHANES:2003~2006年)」の合計4つのデータセットが用いられました。
分析の対象となったのは、50歳以上の約1万2000人です。
それら対象者は、1日10時間にわたる活動量計の記録が最低でも4日間あり、少なくとも2年間はモニタリングされていました。
加えて、教育レベル、身長、体重、喫煙歴、アルコール摂取量、心血管疾患・がん・糖尿病の有無など、詳細な情報も提供されました。
そしてサーゲルブ氏は、この最新の分析と結果が、以前の研究よりも正確だと主張しています。
というのも、彼らは4つのデータセットを丹念に調整することで、各データセットに含まれる個人データを互いに比較できるようにしたからです。
4つのデータセットはそれぞれ別々の情報源ですが、その調整によって、あたかも全員が1つの研究に参加しているかのようにデータを扱うことができたというのです。
では、その信頼性の高い(と主張している)分析結果はどうだったのでしょうか。
研究の結果、分析対象となった約半数(6042人)は、毎日10.5時間以上座ったまま過ごしていました。
そして1日12時間以上座っていると、8時間座っている人に比べて死亡リスクが38%増加することを発見しました。
ただしこの結果は、中程度以上の身体活動が1日22分未満の人に限りました。
言い換えると、中程度以上の身体活動を22分以上行えるなら、座っている時間の長さに関係なく、死亡リスクが低下していたというのです。
さらに、身体活動量が増加するにつれて、死亡リスクが低下することも分かっています。
例えば、1日に10分余分に運動すると、座って過ごす時間が10.5時間未満の人では死亡リスクが15%低下し、10.5時間以上座っている人では死亡リスクが35%低下していたのです。
1日22分の中程度以上の身体活動であれば、たとえ仕事が忙しくても、ほとんどの人が実行可能でしょう。
そしてサーゲルブ氏によると、「平均1日22分」で良いとのこと。
例えば、「50分の活動を週3日」のように、運動量を1週間で振り分けても同様の効果が期待できるというのです。
もし、これまで「1日40分以上の運動はできない」と挫折したり諦めたりしていた人がいるなら、改めて希望を持てます。
この新しい研究結果をもとに「1日平均22分以上」早歩きしたり、自転車に乗ったりすると良いわけですね。
通勤方法を変えたり、率先してイヌの散歩に出かけたり、シャワーを浴びる前に軽い筋トレをしたりするだけでも、きっと効果があるはずです。
参考文献
Daily 20-25 mins of physical activity may offset death risk from prolonged sitting https://www.eurekalert.org/news-releases/1005440 Brief Daily Exercise Can Lower Your Risk of Death From Too Much Sitting https://www.everydayhealth.com/fitness/brief-daily-exercise-can-lower-your-risk-of-dying-from-too-much-sitting/元論文
Device-measured physical activity, sedentary time, and risk of all-cause mortality: an individual participant data analysis of four prospective cohort studies https://bjsm.bmj.com/content/early/2023/10/06/bjsports-2022-106568