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実際、過度の日焼けは皮膚の細胞膜を傷つけることがよく知られています。
長年にわたって強い光を浴び続けると、皮膚の弾力性が失われ、シミやシワが目立つようになります。
これは光老化と呼ばれる現象で、「メラノーマ(悪性黒色腫)」などの皮膚がんの発症因子になると考えられています。
メラノーマとは、表皮にあるメラノサイトががん化した悪性腫瘍で、機能不全により紫外線から身を守るメラニン(色素)を作り出せなくなるものです。
メラノーマは、アフリカを含む第三世界の肉体労働者にとって、発症リスクが高い上に高価な治療費が払えないという点で非常に問題視されています。
ベケレさんはこれを踏まえ、誰でも簡単に入手できる「石鹸」に皮膚がんの予防効果を持たせようと考えたのです。
ベケレさんの画期的なアイデアはコンペの審査員に評価され、3Mプロダクトエンジニアリングの専門家であるデボラ・イザベル(Deborah Isabelle)氏のサポートの元、研究と開発がスタートしました。
ベケレさんはまず、メラノーマの仕組みについて研究し、皮膚がんを予防するには免疫細胞の一部である「樹状細胞」を再活性化させることが重要であると特定。
そうして数カ月の実験の末、がん細胞によって損傷された樹状細胞を再活性化させ、がんに対抗する自己防衛機能を回復させる石鹸の開発に成功したのです。
ベケレさんはこれを「皮膚がん治療石鹸(Skin Cancer Treating Soap:SCTS)」と命名しました。
石鹸に用いた化合物のレシピも明かしており、サリチル酸40mg、ココナツオイル680g、トレチノイン12mg、グリコール酸20mg、オーガニックシアバター680g、非加熱の生ハチミツ小さじ2となっています。
そして驚くべきはその安価なコストです。
アメリカ国内では一般的に、メラノーマの治療に約4万ドル(約600万円)の費用がかかりますが、ベケレさんの石鹸は3~4カ月分(20個)でわずか10ドル(約1500円)しかかかりません。
ベケレさんは「自分のアイデアを科学的に役立つだけでなく、できるだけ多くの人が利用できるものにしたかったのです」 と話しています。
太陽の下で肉体労働をした後に、この石鹸を使って体を洗えば、誰もが低コストで皮膚がんを予防できるようになるかもしれません。
そしてベケレさんの発明は、今月9・10日(2023年10月)にミネソタ州セントポールの3M本社で開催された最終発表で、見事グランプリに輝きました。
ベケレさんは”アメリカで最も優秀な若き科学者”として様々なメディアに取り上げられており、一躍”時の人”となっています。
しかし、彼の最終目標はコンテストの優勝ではありません。
ベケレさんは今後、自身の発明をさらに改良し、この石鹸を十分な医療サービスを受けられないコミュニティに配布するための非営利団体を5年以内に設立したいと構想しています。
天才少年の躍進はまだまだ続きそうです。
参考文献
14-year-old prodigy who invented soap for skin cancer named ‘America’s Top Young Scientist’ https://www.zmescience.com/science/news-science/14-year-old-soap-skin-cancer/ 14-year-old named America’s Top Young Scientist for development of skin cancer treatment https://news.3m.com/2023-10-11-14-year-old-named-Americas-Top-Young-Scientist-for-development-of-skin-cancer-treatment Innovative Minds: Heman Bekele https://youngscientistlab.com/annual-challenge/finalists-mentors-judges/winners/heman-bekele