若き天才少年が皮膚がんを治療する「石鹸」を発明し、大きな話題を呼んでいます。

この画期的な石鹸を発明したのは、アメリカ東部バージニア州にあるW・T・ウッドソン高校に通うヒーマン・ベケレ(Heman Bekele)さん、14歳。

ベケレさんは、アメリカ最大手の化学・電気素材メーカー「3M」が主催する2023年度の3Mヤング・サイエンティスト・チャレンジにて見事グランプリに輝き、賞金2万5000ドル(約375万円)を手にしました。

ベケレさんはどうしてこの石鹸を作ろうと思ったのでしょう?

また石鹸はどのように皮膚がんを予防してくれるのでしょうか?

目次

  • どうして皮膚がんに効く「石鹸」を作ったのか?
  • 石鹸はどうやって皮膚がんに対抗するのか?

どうして皮膚がんに効く「石鹸」を作ったのか?

3Mヤング・サイエンティスト・チャレンジ(About The Challenge)は、アメリカの高校5〜8年生(10〜14歳)を対象とした国内トップクラスの科学コンテストです。

今年度のコンテストは2022年12月7日にスタートし、多くの参加者たちが”アメリカで最も優秀な若き科学者(America’s Top Young Scientist)”の称号を目指して、自身の発明に取り組みました。

ベケレさんも当時、コンテストに出品するためのアイデアに頭を悩ませていたといいます。

そんな中、幼少期に体験した一つの思い出が蘇りました。

彼はもともとアフリカ東部エチオピアの生まれであり、そこで容赦なく照りつける太陽の下、懸命に働く人々の姿を毎日のように目にしていたのです。

ベケレさんは4歳のときに渡米しますが、それからも日に焼かれて働く母国の人々が忘れられなかったそう。

そこで彼は日焼けを原因とする「皮膚がん」を低コストで予防できるようなアイデアに取り組むことにしたのです。

Credit: 3M Young Scientist Challenge(youtube, 2023)

実際、過度の日焼けは皮膚の細胞膜を傷つけることがよく知られています。

長年にわたって強い光を浴び続けると、皮膚の弾力性が失われ、シミやシワが目立つようになります。

これは光老化と呼ばれる現象で、「メラノーマ(悪性黒色腫)」などの皮膚がんの発症因子になると考えられています。

メラノーマとは、表皮にあるメラノサイトががん化した悪性腫瘍で、機能不全により紫外線から身を守るメラニン(色素)を作り出せなくなるものです。

メラノーマは、アフリカを含む第三世界の肉体労働者にとって、発症リスクが高い上に高価な治療費が払えないという点で非常に問題視されています。

ベケレさんはこれを踏まえ、誰でも簡単に入手できる「石鹸」に皮膚がんの予防効果を持たせようと考えたのです。

石鹸はどうやって皮膚がんに対抗するのか?

ベケレさんの画期的なアイデアはコンペの審査員に評価され、3Mプロダクトエンジニアリングの専門家であるデボラ・イザベル(Deborah Isabelle)氏のサポートの元、研究と開発がスタートしました。

ベケレさんはまず、メラノーマの仕組みについて研究し、皮膚がんを予防するには免疫細胞の一部である「樹状細胞」を再活性化させることが重要であると特定。

そうして数カ月の実験の末、がん細胞によって損傷された樹状細胞を再活性化させ、がんに対抗する自己防衛機能を回復させる石鹸の開発に成功したのです。

ベケレさんはこれを「皮膚がん治療石鹸(Skin Cancer Treating Soap:SCTS)」と命名しました。

石鹸に用いた化合物のレシピも明かしており、サリチル酸40mg、ココナツオイル680g、トレチノイン12mg、グリコール酸20mg、オーガニックシアバター680g、非加熱の生ハチミツ小さじ2となっています。

Credit: 3M Young Scientist Challenge(youtube, 2023)

そして驚くべきはその安価なコストです。

アメリカ国内では一般的に、メラノーマの治療に約4万ドル(約600万円)の費用がかかりますが、ベケレさんの石鹸は3~4カ月分(20個)でわずか10ドル(約1500円)しかかかりません。

ベケレさんは「自分のアイデアを科学的に役立つだけでなく、できるだけ多くの人が利用できるものにしたかったのです」 と話しています。

太陽の下で肉体労働をした後に、この石鹸を使って体を洗えば、誰もが低コストで皮膚がんを予防できるようになるかもしれません。

そしてベケレさんの発明は、今月9・10日(2023年10月)にミネソタ州セントポールの3M本社で開催された最終発表で、見事グランプリに輝きました。

ベケレさんは”アメリカで最も優秀な若き科学者”として様々なメディアに取り上げられており、一躍”時の人”となっています。

しかし、彼の最終目標はコンテストの優勝ではありません。

ベケレさんは今後、自身の発明をさらに改良し、この石鹸を十分な医療サービスを受けられないコミュニティに配布するための非営利団体を5年以内に設立したいと構想しています

天才少年の躍進はまだまだ続きそうです。

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参考文献

14-year-old prodigy who invented soap for skin cancer named ‘America’s Top Young Scientist’ https://www.zmescience.com/science/news-science/14-year-old-soap-skin-cancer/ 14-year-old named America’s Top Young Scientist for development of skin cancer treatment https://news.3m.com/2023-10-11-14-year-old-named-Americas-Top-Young-Scientist-for-development-of-skin-cancer-treatment Innovative Minds: Heman Bekele https://youngscientistlab.com/annual-challenge/finalists-mentors-judges/winners/heman-bekele
情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 14歳の天才少年が「皮膚がんを治療できる石鹸」を発明!