出産現場ではまれに、赤ちゃんが羊膜の袋に包まれた状態で生まれることがあります。

これをエンコールバース(En Caul Birth)と呼びます。

その様子はまるで水風船に閉じ込められているようで、とても神秘的です。

水の中に浮いているので、英語圏ではマーメイド・バース(人魚の出産)と呼ばれたりもします。

しかし初耳の方からすれば、すでに脳内は「?」でいっぱいでしょう。

どうしてエンコールバースは起こるのか、どれくらいの頻度で発生するのか、羊膜に包まれたままで赤ちゃんに危険はないのか、などなど。

ここではそれらの答えも含め、エンコールバースについて詳しく見ていきます。

目次

  • 「エンコールバース」とは?
  • エンコールバースが起こりやすい条件とは?

「エンコールバース」とは?

Credit: canva

胎児はふつう、母親の子宮内で「羊膜」という透明の薄い袋に包まれた状態にあります。

羊膜の中は「羊水」という液体で満たされており、クッションの役割を果たして、胎児を強い衝撃から守ります。

また体温を調節して母体の温度変化の影響を受けないようにする機能もあり、羊膜は胎児の保護と成長に欠かせない場所です。

妊娠期間中、胎児は子宮内を自由に動き回りますが、大きくなるにつれて羊膜内に動くスペースがなくなっていきます。

そして出産日が近づくと、胎児は出産に備えた姿勢を取り、産道のトンネルを下る準備をします。

いよいよ陣痛が始まると、羊膜が破けて中の羊水が流れ出します。いわゆる「破水」です。

破水が始まると、胎児が羊膜の袋を破って母体から外に出ようとする合図となります。

ところがごく稀に、胎児を包んでいる羊膜がまったく破けない状態で生まれることがあります。

これが「エンコールバース(En Caul Birth)」です。

エンコールバースとは日本語にすると「被膜出産」というような意味で、胎児が羊膜を被った状態で生まれることを意味します。

では実際に、最近報告されたエンコールバースの映像を見てみましょう。

 

この投稿をInstagramで見る

 

Steve Maraboli(@stevemaraboli)がシェアした投稿

このように羊膜が破れていないので、赤ちゃんはまだ羊水の中に浸っている状態です。

米マサチューセッツ総合病院の産婦人科医であるジェニファー・ボイル(Jennifer Boyle)氏によると、羊膜は出産中にほぼ必ず破れるので、エンコールバースの発生率は非常に低く、推定では8万人に1人の割合だといいます。

では、エンコールバースが起こりやすくなる原因は何なのでしょうか?

エンコールバースが起こりやすい条件とは?

Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

エンコールバースが確実に起こる条件は知られていませんが、ボイル氏は「その発生率を高める要因ならいくつか存在する」と指摘します。

1つ目は「早産」です。

一般的に妊娠37週〜42週での出産を「満期産」といいますが、それ以下の短い妊娠期間で出産すると早産となります。

早産で生まれる赤ちゃんは体が未発達で小さい傾向にあり、羊膜への圧力が小さいので、出産前に羊膜を破れないことがあるのです。

そのため、羊膜ごと産道を通る可能性も高くなります。

2つ目は「非常に迅速な出産」です。

たとえ満期産だったとしても、出産直前の陣痛やお産の流れが極端に速い場合、羊膜が破れることなくスルリとそのまま出てくることがあるといいます。

3つ目は「帝王切開」です。

帝王切開は何らかの問題が生じて通常の出産が難しいときに、外科的な開腹によって赤ちゃんを取り出します。

ここでも羊膜が破れていなければ、そのまま取り出されることがあるようです。

母子ともにまったく無害

最も気になるのは、エンコールバースが赤ちゃんや母体にとって危険がないのかどうかでしょう。

しかしボイル氏によると、羊膜ごと生まれても母子ともに何の悪影響もないといいます。

というのも通常の出産とエンコールバースでは「羊膜が体内で破れるか、体外で破れるか」の違いしかありません。

羊膜ごと生まれたとしても、赤ちゃんはへその緒を通じて十分な酸素が送られているので、羊水の中でも生存できます。

あとは羊膜を破いて、赤ちゃんを取り出すだけです。

羊膜は非常に薄い皮なので、指を突き刺すだけで簡単に破れます。

例えば、このように。

羊膜から出た赤ちゃんは肺の中の羊水を吐き出して、肺呼吸へと移っていきます。

この映像でも羊膜を破いた途端に、元気よく泣き始めているのが分かりますね。

一方でボイル氏は、エンコールバース自体は何も心配する必要はないが、懸念すべき点があるとすれば、赤ちゃんが未熟児である場合だと指摘します。

先ほど言ったように、エンコールバースは早産で発生する確率が高く、体の小さな未熟児は呼吸障害や発達の遅れ、視覚や聴覚の問題を起こしている可能性があります。

もし赤ちゃんがエンコールバースで生まれた場合は、身体機能に未発達や異常がないかを調べてもらうべきでしょう。

いずれにせよ、エンコールバースは本来なら見る機会のない、お母さんの胎内にいるときの赤ちゃんの様子が垣間見える貴重な姿です。

生命の神秘を感じますね。

全ての画像を見る

参考文献

En Caul Birth: Fascinating Video Shows Rare Baby Born Inside The Amniotic Sac https://www.iflscience.com/en-caul-birth-fascinating-video-shows-rare-baby-born-inside-the-amniotic-sac-71130 What to Know About En Caul Births https://www.parents.com/baby/all-about-babies/you-have-to-see-this-video-of-a-baby-born-in-an-amniotic-sac/ En Caul Birth: What Is It? https://www.webmd.com/baby/en-caul-birth-what-is-it
情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 神秘の出産!赤ちゃんが羊膜に包まれたまま生まれる「エンコールバース」とは?