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中国ではここ数年、若者の間でミルクティーの人気が急速に伸びています。
そこで清華大学と中央財経大学の研究チームは、ミルクティーの過度な摂取が、若者の心の健康にどのように関わっているのかを詳しく調べるため、北京の大学生5281人を対象に調査を行いました。
なお、今回の調査が行なわれた背景には、過去に1万4500人を対象に行なわれた、甘いミルクティーを含む不健康な食生活と精神的健康の関係の調査において、ミルクティーの摂取が精神的な不調のリスクを増加させることが示唆されていたことがあります。
今回まず研究チームは、ミルクティーに対して持続的な欲求や過剰摂取などの要因を見るため、アメリカ精神医学会が作成した「DSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル第5版)」というマニュアルに従って調査を行いました。
甘いミルクティーに対する依存症はDSM-5で正式に分類されているわけではありませんが、今回の調査の結果では一部の若者が依存症の兆候を示していることがわかりました。
参加者の約半数は週に1杯以上、20.6%の参加者は週に2~3杯、2.6%の参加者にいたっては、週に4~6杯もの甘いミルクティーを飲んでいたことがわかったのです。
杯数にすると少なく感じるかもしれませんが、例えばタピオカミルクティー1杯には角砂糖18個〜28個もの砂糖が使われています。
これは70g程度にもおよぶ砂糖の量であり、ミルクティー1杯だけでWHOが制限を推奨する1日およそ25gという砂糖の量の2倍以上になるのです。
砂糖はマイルドドラッグとも呼ばれます。疲れた時やストレスを感じた時などに甘いもので幸福感を得る習慣は、無意識に脳内で「砂糖を摂ること=幸せ」と感じてしまい、常は脳がそれを求める状態になるのが砂糖依存症です。
このことから、頻繁に甘いミルクティーを飲む人は、ミルクティーそのものに依存しているのではなく、ミルクティーに入っている砂糖に依存している状態であると考えられます。
そして、参加者は調査の中で、抑うつや不安の症状、自殺に対する考え、そしてミルクティーの摂取に関連するさまざまな感情や行動を報告しました。
例えばミルクティーに対する依存感、罪悪感、離脱の感覚、耐性の増加、摂取を止めることができない強い欲求、または摂取を控えようとする意志など、自分の経験や感じることについての項目が用意されました。
その結果、ミルクティーへの依存度が高ければ高いほど、抑うつや不安、そして自殺に関する考えが増加する傾向が見られたのです。
また、研究者チームはさらに、若者たちはストレスの発散や感情を調整する手段としてミルクティーを選んでいる可能性があるとも考えています。
ミルクティーをたくさん飲んでしまう人は、ストレスからミルクティーを飲むようになり、そして砂糖に依存してしまうのかもしれません。
ミルクティーの依存症が、心の健康の問題にどのような関係があるのか、さらなる調査が進行中です。
将来の研究においては、参加者の数を増やし、ミルクティーの摂取を長期間追跡することが考えられています。
今回、ミルクティーの摂取が砂糖に対する依存症のリスクを持ち、さらに抑うつ、不安、自殺の考えとも関連していることがわかりました。
ただ、何度も言うように、問題はミルクティー本体ではなく、ミルクティーに含まれる大量の砂糖です。
そのため清涼飲料水やお菓子の過剰摂取と同列の問題ではありますが、ミルクティーはおしゃれな飲み物や流行り物として楽しむ人が多く、コーラやお菓子のように砂糖の過剰摂取に注意が向きづらい傾向があります。
この知見は、若者の精神的健康を守るための方針、例えば広告への制約や心の健康に関する教育の提供、そして食品安全基準の確立などの取り組みを進める手助けとなるでしょう。
日本でもブームが過ぎたとはいえ、タピオカミルクティーはまだまだ人気で多くのお店で飲んでいる人をみかけます。
今回の研究はミルクティー自体に問題があると指摘してるわけではありませんが、コンビニや露店で提供される非常に甘いミルクティーを毎日のように飲んでいるという人は、おそらく砂糖の摂りすぎと考えられるので、自分の心や体に注意してみたほうがいいのかもしれません。
参考文献
Rising Addiction to Milk Tea Linked to Depression in Adolescents https://www.sciencealert.com/rising-addiction-to-milk-tea-linked-to-depression-in-adolescents元論文
New form of addiction: An emerging hazardous addiction problem of milk tea among youths https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0165032723010820