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そこで現在注目されているのが、「LTO(Linear Tape-Open)」などの磁気テープです。
LTOはコンピュータ用の磁気テープであり、従来の磁気テープと同様、薄いテープ状のフィルムに粉末状の磁性体が乗っています。
記録機器の磁気ヘッドを通過する際に、それぞれの磁気を変化させることで情報を記録するのです。
現在、私たちにとって身近な記憶媒体は、ハードディスク(HDD)や、SSDなどの半導体メモリであり、ハードディスクは特に記憶容量が大きいというメリットがあります。
一方、LTOのメリットもまた記憶容量が大きいことであり、その最大容量はハードディスクをはるかにしのぎます。
2021年に発売された第9世代「LTO-9」は、非圧縮時で18TB、圧縮時で45TBものデータを保存できるほどです。
これでLTOテープのサイズが10.5cm×10.2cm×2.1cmと、ハードディスクよりも小さいのだから驚きです。
しかもLTOのランニングコストは、ハードディスクのおよそ30%しかかかりません。
さらにテープという形式上誤解されやすいですが、ハードディスクに比べてエラー発生率が1000分の1から1万分の1だと言われています。
またデータ転送速度もLTO-9で最大400MB/sとなっており、ハードディスク(約150MB/s)やSSD(約500MB/s)と比較しても決して遅くありません。
加えてLTOは50年以上劣化しないため、大量のデータを長期保存するのに向いているのです。
とはいえ2022年には最大容量22TBのハードディスクが登場。
ハードディスクも負けじと進化を続けているようです。
それでも最近、IBMと富士フイルムが新しい磁気テープを発表しました。
これによってハードディスクを完全に置き去りにしてしまったようです。
2023年8月30日、IBMと富士フイルムは、世界最大の記憶容量を誇るテープ・ストレージ・システムを開発しました。
このシステムは、IBMの最新世代の「TS1170ドライブ」と、富士フイルム開発の磁気テープ「IBM 3592 JFテープ・カートリッジ」を組み合わせたもので、IBMより発売されています。
その最大容量はなんと非圧縮時50TB、圧縮時150TBという驚異的な数字です。
同じく磁気テープであるLTO-9(2021年)が非圧縮時18TBであることを考えると、磁気テープの容量が驚くべき速度で進化しているのが分かりますね。
では今回の新システムは、どのように磁気テープの限界を広げたのでしょうか。
そのポイントは、「ナノ粒子設計技術」にあります。
テープに散りばめる磁性体のサイズを縮小し、磁気特性を強化することで、面記録密度を大幅に向上させているのです。
また磁性体の高分散技術により、個々の粒子の凝集を防ぎ、粒子をより均一に分散させることができました。
加えて、磁性体が乗るフィルムをより薄く、強固にすることで、カートリッジ1本あたりのテープ長を15%(第5世代3592 JEテープ・カートリッジと比較)延長しています。
この新しい磁気テープを読み取るには専用のドライブが必要ですが、従来のハードディスクとは比較にならないほど大量のデータを安全に保管できます。
ますます複雑化する情報社会において、磁気テープこそが最良の記憶媒体なのかもしれません。
「テープが古い」時代はもう終わり、「テープこそが最先端」な時代が到来しています。
参考文献
Fujifilm and IBM Develop 50TB Native Tape Storage System, Featuring World’s Highest Data Storage Tape Capacity(1) https://newsroom.ibm.com/2023-08-29-Fujifilm-and-IBM-Develop-50TB-Native-Tape-Storage-System,-Featuring-Worlds-Highest-Data-Storage-Tape-Capacity-1 富士フイルムとIBM 世界最大の記録容量50TB(非圧縮時)を実現したテープ・ストレージ・システムを開発 https://www.fujifilm.com/jp/ja/news/list/9848