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動物園によると、このクマは「アンジェラ(Angela)」という名前の4才のメスで、種としてはマレーグマ(学名:Helarctos malayanus)に属します。
マレーグマは東南アジアの森林を原産地とする世界最小のクマです。
グリズリーやホッキョクグマといった他の大型種が後ろ足で立ち上がると3メートル近くに達しますが、マレーグマは大人でも最高で1.3メートルの高さしかありません。
全体のサイズもだいたい大型犬くらいのものです。
一方で、舌の長さはクマの中で最も長く、30センチに達します。これはミツバチの巣からハチミツを取り出すために進化したとのことです。
野生のマレーグマは他に昆虫や果物を食べています。
では、マレーグマのアンジェラが2本足で器用に真っ直ぐ立ったのは、どういう理由からだったのでしょうか?
専門家によると、森林に生息するマレーグマは樹上に登るクライミング能力を高度に発達させました。
木登りをする際は、まず木の幹を支えにして2本足で立ち上がることから始まります。
特にマレーグマはあらゆるクマの中で最も卓越したクライマーであり、そのおかげで木の支えがなくても、地上で真っ直ぐ立てるようになったのです。
マレーグマの母親には、赤ん坊を抱いたまま2本足で歩き回ることさえあるといいます。
そしてマレーグマが地上で2本足になるのは、野生下で見知らぬ相手に遭遇したときが多いという。
立ち上がって胸のマークを見せることで相手を威嚇するのです。
そのため動物園のアンジェラは来園者に向かって「ここは自分の縄張りだ」とアピールした可能性があります。
しかしアンジェラは毎日のように来園者を見ており、人間の存在には慣れているため、威嚇とは別の目的があるとも考えられています。
最も有力なのは来園者から餌をもらうことです。
映像を見た米ワシントン州立大学(WSU)の動物学者であるチャールズ・ロビンス(Charles Robbins)氏は「おそらく、クマは2本足で立っているときに群衆からよく餌を投げ与えてもらえることを学習したのでしょう」と指摘します。
また手を振る動作も餌の催促をするために人々の真似をした可能性が高いようです。
マレーグマは野生では単独で生活していますが、集団で飼育されると高い社会性を発揮し、ヒトを含む霊長類以外では唯一、仲間の表情を真似して互いにコミュニケーションを取ることができるといいます。
アンジェラも来園者から餌をもらうために、2本足で手を振るパフォーマンスをして、人々とコミュニケーションを図っているのかもしれません。
とりあえずはこれでアンジェラの着ぐるみ疑惑も晴れることでしょう。
ちなみにアンジェラの話題が注目を集めて以来、杭州動物園の来園者数は30%も増加したそうです。
参考文献
China zoo says its bears aren’t people in bear costumes https://www.zmescience.com/ecology/china-zoo-says-its-bears-arent-people-in-bear-costumes/ Chinese zoo denies its sun bears are humans dressed in costumes https://www.theguardian.com/world/2023/jul/31/chinese-zoo-denies-sun-bears-humans-costumes Sun bears appear so human-like they are mistaken for people in suits – experts explain https://theconversation.com/sun-bears-appear-so-human-like-they-are-mistaken-for-people-in-suits-experts-explain-211540