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これまでの研究によると、ラングホルトはその港湾都市としての地位から近隣諸国との貿易が活発であり、財政的に非常に豊かな街だったようです。
最大で500軒の家が立ち並び、3000人以上の市民が暮らしていたとの見解もあります。
しかし伝承によると、その豊かさゆえに人々は高慢で軽薄になり、罪深い生活を送るようになったという。
次第に街は、不信心者や酔っ払い、強欲や富を誇示する人々で溢れ返るようになりました。
そして伝承は、その結果としてラングホルトに起こった悲劇をこう伝えています。
ある年のクリスマス間近の冬の日、若い酔っ払いの一団が地元の宿屋に泊まっていた神父に詰め寄り、「ブタに最後の晩餐を与えるよう」強要した。
人々の退廃に絶望した神父は教会に行き、祈りを捧げ、神に街の若者たちを罰するようお願いし、翌日にラングホルトを去った。
その直後、ラングホルトを地上から消し去る大嵐が襲来し、一夜にして街を海の底に沈めた。
記録によると、これが起こったのが1362年1月15日または16日のことで、水没により数千人が命を落としたといいます。
この物語は600年以上にわたり人々の間で語り継がれ、今日では、海底に沈んだとされる有名な古代都市にちなんで「北海のアトランティス(Atlantis of the North Sea)」と呼ばれるようになりました。
しかし、当のアトランティスが架空の存在と見られるのに対し、ラングホルトについてはその実在を暗示する遺物が過去にいくつも見つかっているのです。
例えば、ラングホルトが位置した場所のすぐ近くに浮かぶ小さな島「スートファール島(Südfall)」の干潟では、ラングホルトと同時代の陶器や金属製の装飾品、武器などが回収されています。
そこで研究チームは今年5月に、ラングホルトが実在したことを明らかにすべく、スートファール島の干潟で考古学調査を敢行しました。
今回の研究では、地球科学的な手法と考古学的な手法を組み合わせて、干潟の下の広範囲なマッピングを行いました。
具体的には、磁気勾配や電磁誘導の技術を使い、泥の下に沈んでいる物体の形状のスキャニングを行っています。
その結果、スートファール島の周囲約1.9キロにわたって、多数の墳墓やキリスト教会跡、港や堤防の一部、大規模な排水システムなどが並んでいることが判明したのです。
これは確かに、この地がかつて海に面する港湾都市として存在していたことを証明するものです。
また研究者らは、見つかった教会跡の基礎部分がかなり大きな規模であったことから、ラングホルトは周辺のキリスト教区(教会組織の最小の単位)に比べても上位に位置していたのではないかと推測しています。
上位の教区が堕落と退廃に落ちたからこそ、伝承の中の神父は「もう神に滅ぼしてもらうしかない」と考えたのでしょうか?
今回の発見は実に驚くべきものですが、まだラングホルトの全体像や街の詳しい構造までは特定されていません。
研究チームは今後さらなる調査を進めることで「海に沈む前の民衆の暮らしについても明らかにしていきたい」と述べています。
参考文献
A Legendary Lost City Swallowed By The Ocean Has Been Found https://www.sciencealert.com/a-legendary-lost-city-swallowed-by-the-ocean-has-been-found Lost since 1362: Researchers discover the church of a sunken medieval trading place https://press.uni-mainz.de/lost-since-1362-researchers-discover-the-church-of-a-sunken-medieval-trading-place/ Germany’s ‘Atlantis’is FOUND: Archaeologists discover the legendary lost city of Rungholt – 660 years after it was swallowed by the North Sea during a heavy storm https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-12159779/Germanys-Atlantis-Experts-discover-lost-city-Rungholt.html