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そして各カテゴリーの住居に住む人々から得られた健康状態や社会経済的な地位、精神疾患の有無などと照らし合わせました。
その結果、意外にも都市部の居住環境だけがうつ病リスクを高めるという有意な関連性は見られませんでした。
これについて研究者は「高い建物や人口が密集した都心部では、ソーシャルネットワークや他者との交流の機会の多さがメンタルヘルスに利益をもたらしている可能性がある」と指摘しました。
それから自宅と職場が近く、移動時間が少ないことなども心身への負担を減らしていると考えられます。
さらに、都市部でも緑地公園や海岸線などのオープンスペースにアクセスしやすい「高層・低密度」の環境では、農村部(低層・低密度)と並んで、うつ病リスクが最も低くなっていたのです。
自然環境で過ごすことがメンタルヘルスに良い作用をもたらすのはよく知られています。
よって都市部に住むなら、自然環境にアクセスしやすい場所がベストでしょう。
一方で、うつ病リスクが最も高まっていたのは、一戸建てやアパート、マンションを含む「低層・中密度」の郊外でした。
一見すると、郊外は都会より閑静としていてメンタルヘルスには良さそうですが、なぜうつ病リスクを高めていたのでしょうか?
多くの人は、プライバシーや静寂、自分の庭を持ちたい、などのメリットを期待して郊外に居住地を持ちます。
しかし、こうした要因が上手く快適に暮らしに結びつかないパターンがあるようです。
研究者は、郊外でうつ病リスクが高まった要因について「スプロール化が問題だ」と指摘します。
スプロール化とは、都市部の急速な発展や開発により、その外縁にある郊外の居住環境が無秩序かつ無計画に広がっていくことを指します。
スプロール化によって郊外の人々は、都市部にある職場への車を使った通勤時間が長くなる、緑地公園などのオープンスペースが少ないなどの影響を受けやすくなるという。
さらに研究者は「都市部ほど人口密度が高くないため、ショップやカフェ、レストランなど、人々が集まって交流を深められる商業施設を多く確保できない」と指摘しました。
チームは今回の調査結果が、都市開発や郊外の建設計画の一助として活用されることを期待しています。
例えば、郊外に暮らす人々の健康を考えるなら、緑地スペースや交流の場となる商業施設を増やしたり、車での長時間通勤に依存しないようなインフラを整備することが有効かもしれません。
研究者は最後にこう述べています。
「私たちの研究はデンマークの街を対象としたものであり、同じ結果が他の国や地域に当てはまるとは限りません。
また心身の健康は居住環境以外にも、様々な文化的・地理的要因によって左右されます。
それでも本研究の成果は、居住環境がメンタルヘルスに与える影響を知る一つのモデルとして、世界の多くの地域で同様の研究を進めるための土台となるはずです」
確かに、精神疾患を発症する原因は様々ですが、郊外に住むなら「低層・中密度」の住宅地は避けた方がいいかもしれません。
参考文献
New Research Reveals Which May Be Better For Mental Health: The City or The Suburbs https://www.sciencealert.com/new-research-reveals-which-may-be-better-for-mental-health-the-city-or-the-suburbs Depression more common in surburban single-family houses than in city centres: new report https://www.euronews.com/next/2023/05/27/depression-more-common-in-surburban-single-family-houses-than-in-city-centres-new-report元論文
Higher depression risks in medium- than in high-density urban form across Denmark https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adf3760