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画像生成AIが最初に登場して以来、このツールは瞬く間に世界中に広がりました。
現在進行形でその技術は向上しており、「AIが出力した画像」と「クリエイターが描いた絵」の見分けがつかないケースも増えてきました。
もちろんAIの画像にはAI特有の傾向や様々な欠点が見られますが、簡単な指示だけで瞬時に何パターンもの画像を生成してくれる点は、人間では成しえない強みだと言えます。
OpenAI社は2D画像で起きているこの現象を、3Dモデルの分野でも生じさせようとしています。
彼らは2022年の12月、3Dモデルを生成するAIシステム「Point-E」をリリースしました。
Point-Eは3D点群(3次元座標を持つ点データの集合)により3Dモデルを生成します。
これは文字通り小さな点が集まってできた3Dモデルであり、サンプルを見る限りでは、お世辞にも質が良いとは言えません。
ところがそれからわずか数カ月後、OpenAI社は3Dモデルを生成する新しいAIシステム「Shap-E」をリリースしました。
Shap-EはPoint-Eとは異なり、陰関数によって形状を表現しているため、従来のシステムよりも複雑で正確な3Dモデルを生成できます。
Point-EとShap-Eが生成したモデルを比較すると、質の違いは明らかですね。
しかもこれらは、人間が短い文章もしくは画像で指示を与えるだけで、瞬時に生成されるというのだから驚きです。
「ペンギン」「緑のブーツ」などの一般的なワードだけでなく、「アボカドみたいな椅子」「バナナみたいな飛行機」といった現実にはない独自のデザインも生成可能です。
もちろんPoint-Eから大きく進化したとはいえ、Shap-Eが生成する3Dモデルのサンプルのレベルは高くありません。
かなり昔のゲームであれば違和感はありませんが、現代レベルのモデルではないでしょう。
それでもShap-Eは様々な可能性を秘めており、今後の応用を考えると、技術者だけでなく、一般ユーザーですらワクワクできます。
Shap-Eは、ロールプレイングゲーム(RPG)でプレイヤー独自のアイテムを生成するシステムに利用できるかもしれません。
ゲーム内の鍛冶屋に「黒光りする刀身150cmの大太刀を作ってください」「ダイヤモンドとエメラルドで装飾された豪華な金の盾を作ってください」などと、独自のアイデアでアイテム作成を依頼し、実際に入手できるのです。
これをオンラインゲームに導入するなら、ユーザー同士で独自にデザインした武器や家具を売買する、といったシステムなども構築できるでしょう。
またShap-Eのような3Dモデルを生成するAIは、現実の仕事でも役立つ可能性があります。
例えばゲームや映画、また建築・家具の3Dデザイナーが、作業を簡略化できるかもしれません。
大まかな造形をAIで瞬時に行い、細かな部分をデザイナー自身が修正したり付け加えたりして、品質を向上させるのです。
さらに将来、Shap-Eの性能が画像生成AI並みの飛躍を遂げる可能性もあります。
口頭で指示するだけで、クリエイターの作品と見分けがつかないレベルの3Dモデルが生成されるかもしれないのです。
加えて生成したモデルは、3Dプリンターを通して、現実世界に出力することも可能でしょう。
趣味の範囲であれば、自分が考案した独自の外見・ポーズのキャラクターのフィギュアを言葉1つで入手する、なんてことも十分あり得るのです。
Shap-Eの実力からすると、これらが実現するのはまだ先ですが、夢物語というわけでもありません。
現在Shap-Eはオープンソースとして公開されており、これを利用する人々によって、3Dモデルを生成するAI技術は一気に加速すると考えられます。
参考文献
OpenAI’s new text-to-3D system: The dawn of voice-controlled CAD https://newatlas.com/technology/openai-shap-e-text-3d-ai/ from avocado chair to banana plane, OpenAI’s new tool generates text-to-3D print objects https://www.designboom.com/technology/avocado-chair-banana-airplane-shap-e-openai-text-to-image-3d-printing-05-12-2023/元論文
Shap-E: Generating Conditional 3D Implicit Functions https://arxiv.org/abs/2305.02463