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そんな中、MITの天体物理学者であるキシャレイ・デー(Kishalay De)氏は、カリフォルニア州にあるパロマー天文台の望遠鏡を用いて連星を探していた最中に驚くべき発見をしました。
2020年5月、地球から「わし座」の方向に約1万2000光年離れた場所で、わずか1週間のうちに急激に明るさを増長させる恒星が見つかったのです。
研究チームはこの恒星を「ZTF SLRN-2020」と命名しました。
連星系では一般に、互いの星が十分に接近したときに塵やガスを吸い上げることで光が発生します。
ところが、ZTF SLRN-2020の光度は短期間でそれまでの約100倍の明るさにまで一気に増長していたのです。
これは単に2つの星が接近するだけでは起こらない現象だといいます。
これを受けて、デー氏らは「連星系の2つの星が合体したのではないか」と仮定しました。
そこでNASAの赤外線観測衛星・NEOWISEを用いて追加観測をしたところ、「恒星同士の合体ではない」ことが判明したのです。
ZTF SLRN-2020に見られた光の増長は、2つの恒星が合体した場合の約1000分の1のエネルギー総量でした。
加えて、恒星同士の合体が超高温のプラズマを発するのに対し、ここでは”冷たい塵”が天体を取り囲んでいることが明らかになっています。
そして詳しい分析の結果、この”冷たい塵”は、公転する惑星が中心に位置する恒星のふところに接近することで発生したものと特定されたのです。
デー氏によると、他の年老いた星と同様に、ZTF SLRN-2020も年を取るにつれて大きさが膨張し、周囲を公転する惑星と徐々に近づいていきました。
その後、惑星が恒星の表面をかすめるまで近づくと、恒星の重力で崩壊した惑星の物質が外側に吹き飛ばされ、これが冷却されることで”冷たい塵”になったという。
そして最終的に惑星が恒星に突っ込むことで、光度が約100倍にまで突発的に増長したのだと説明しています。
チームの分析では、恒星の質量は太陽の0.8〜1.5倍で、飲み込まれた惑星は木星の1〜10倍のガス惑星だったと推定されました。
デー氏は「主星による惑星の飲み込みは長い間予測されていましたが、その実態はよく分かっていなかった」とした上で、「だからこそ、この天体を見つけたときには本当に興奮しました」と続けています。
ただし、恒星が惑星を飲み込むプロセスについてはまだ未解明の点も多く、ZTF SLRN-2020の観測は引き続き継続される予定です。
そこで得られたデータは今後、地球を含め多くの惑星系がたどる運命を理解するのに役立つでしょう。
デー氏は「太陽のような星が近くの軌道の惑星を飲み込むことが確認されたことで、私たちの星を含む太陽系の運命の理解におけるミッシングリンクが得られる」と述べています。
今私たちが見ているZTF SLRN-2020は、地球の未来の姿なのかもしれません。
参考文献
For the first time, astrophysicists have caught a star eating a planet https://www.sciencenews.org/article/first-time-astrophysicists-star-eating-planet Astronomers witness apocalyptic end of a world from across the galaxy https://newatlas.com/space/star-destroying-planet-observed/ Star Eats Planet, Brightens Dramatically https://www.caltech.edu/about/news/star-eats-planet-brightens-dramatically元論文
An infrared transient from a star engulfing a planet https://www.nature.com/articles/s41586-023-05842-x