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これは人間だけでなく、かごの中で孤独を味わっているオウムたちにとっても同じようです。
イギリスのグラスゴー大学(The University of Glasgow)コンピューティングサイエンス学部に所属するイエリナ・ヒルスキー・ダグラス氏ら研究チームは、ビデオ通話を楽しむオウムは遠く離れた仲間と交流することで社会的行動をとるようになり、元気になると報告しました。
かごの中で孤独を味わっているペットのオウムにこそ、ビデオ通話が必要だったのです。
この研究は、2023年4月24日にドイツで開催される、人と情報システムの相互作用に関する国際会議「2023 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems」で発表されます。
そして論文は2023年4月19日付で同会議の議事録に掲載されました。
目次
コロナ禍での外出自粛や隔離は、私たち人間に深い孤独感や寂しさを植え付けましたが、ビデオ通話が大いに役立ちました。
人々は家や病室でひとりでも、家族や友人の姿や表情を見ながら、言葉を交わし、時に笑い合い、交流を深めることができたのです。
実は、コロナ禍の人間以外にも隔離された存在がいます。それはペットとして飼育されているオウムたちです。
オウムは知能が高く社会性の高い鳥類であり、野生では大きな群れで生活しています。
ところがペットとして飼育されているオウムたちは、大抵の場合、生涯のほとんどをかごの中で孤独に過ごし、仲間の姿を見たり鳴き声を聞いたりすることは稀です。
研究チームは、「アメリカだけでも2000万羽以上のオウムがペットとして飼われており、社会的、認知的、感情的なニーズを満たすための適切な刺激が不足しています」と述べています。
時にはこうした孤独がオウムに強いストレスを与え、ケージの周りを絶え間なく歩き回ったり、羽をむしり取ったりするなどの問題行動を引き起こします。
では、人間で有効だった「ビデオ通話」によって、オウムたちの孤独感を紛らわせることはできるのでしょうか?
研究チームは、この点を確かめるため、合計18羽のペットのオウムに「ビデオ通話」を導入する実験を行いました。
それぞれのオウムたちは、飼い主のサポートのもと、自分たちの意思でタブレット機器を操作してビデオ通話するトレーニングを2週間受けました。
まずオウムたちは、ベルを鳴らしてビデオ通話したいことを飼い主に知らせます。
飼い主がタブレットを起動させると、画面には「オウムの友達」が表示されるので、オウムは飼い主のサポートのもと画面をタッチして、自分の意志で通話したい相手を選ぶことができました。
そうしてオウム同士のビデオ通話が始まると、飼い主は彼らの交流を見守りました。
この実験は約3カ月、合計1000時間以上にわたって実施され、オウムたちの様子や変化が観察されました。
合計147回のオウム同士のビデオ通話が行われた結果、オウムたちは画面上の相手に社会的行動をとるようになりました。
オウムたちは時間の経過と共に親密になり、共に歌ったり、お互いに羽繕いしようとしたりしたのです。
また新しいスキルを互いに学ぶような様子も観察されており、この実験の中で、あるオウムは初めて飛行したり採餌したりしました。
かごの中で生きてきたオウムたちは、仲間の振る舞いから初めて学ぶことも多かったのでしょう。
研究チームは、「オウムたちは、画面上の仲間と本当に交流できていることを理解しているようであり、観察された行動は、鳥たちの間で見られる実際の相互作用(社会的行動)と同じでした」と述べています。
この実験で得られた経験を飼い主たち全員が高く評価しており、「今後もペットのオウムのためにこのシステムを使い続けたい」と感じたようです。
今回の実験は、人間の介入によって生じた弊害を、科学技術でいくらかカバーできることを示しています。
特にペット達は、飼い主のもとで安全に過ごせる代わりに、社会性が失われがちです。
人間と同じく、ビデオ通話で仲間と繋がるなら、ペットたちの孤独感は和らぎ、「動物本来の生き方」ができるのかもしれません。
参考文献
VIDEO-CALLING TECH COULD HELP LONELY PARROTS FLOCK TOGETHER元論文
Birds of a Feather Video-Flock Together: Design and Evaluation of an Agency-Based Parrot-to-Parrot Video-Calling System for Interspecies Ethical Enrichment.