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日本で最後に巨大カルデラ噴火が起こったのは、今から約7300年前の縄文時代です。
それ以降は幸運なことに発生していませんが、地質学的な証拠から「将来的には100%発生する」と専門家は指摘します。
そのため噴火の再発に備えて、被害範囲を正しく予測し、事前に対策を整えておくことが不可欠です。
そこで研究チームは、9万年前に阿蘇山で起きた国内最大の巨大噴火「阿蘇4噴火」の全体像を明らかにすることにしました。
阿蘇山は、九州中部の熊本県に位置する日本有数の活火山であり、約27万〜9万年前にかけて4度の巨大カルデラ噴火を起こしています。
年代の古い順に「阿蘇1噴火(約27万年前)・阿蘇2噴火(約14万年前)・阿蘇3噴火(約13万年前)・阿蘇4噴火(約9万年前)」と呼ばれ、中でも阿蘇4噴火は日本で最大、世界でも2番目に大きな巨大噴火です。
阿蘇4噴火の火砕流は九州北部まで広がり、一部は約170キロ離れた山口県内にも到達していることが示唆されていました。
しかしそれらの被害情報は断片的なまま散在しており、これまでまとまった”火砕流の分布図”が作成されていなかったのです。
そこでチームは、火砕流の詳細な分布、堆積物の層の厚さ、日本全域に堆積した火山灰の分布などをデジタルデータで整備することで、阿蘇4噴火の被害の全貌を調査。
それにより、これまで簡略的にしか分かっていなかった「阿蘇4火砕流の分布図」を完成させました。
こちらは九州を中心とした火砕流の分布図です。
中央の阿蘇山を中心に、
・北西方向では約120キロ離れた佐賀県西部や長崎県内
・南西・南東方向では約100キロ離れた熊本県天草諸島や宮崎平野南部
・北東方向では約170キロ離れた山口県中部
まで被害が確認できます。
火砕流は九州中部〜北部にかけての平野部の大部分に到達し、さらに福岡市・北九州市・熊本市の3つの政令指定都市を含む7県の範囲を覆っていました。
また阿蘇山に近い熊本県・大分県内では厚いところで50~100メートル以上、佐賀・福岡・宮崎県内では厚いところで10メートル以上の火砕流の堆積が見られます。
それから、噴火により上空に舞い上がった火山灰の主な到達地点も確認されました。
それによると、阿蘇カルデラから1600キロ以上も離れた北海道東部でも、火山灰がところにより15センチの厚さで堆積していたのです。
火山灰の影響は国土のほぼ全域に及んでいます。
神戸大学のマグマ学の専門家である巽好幸(たつみ・よしゆき)氏は、もし阿蘇山の巨大噴火が起きると、日本は次のような事態に陥ると指摘しています。
「まず九州が焼き尽された後、中国・四国一帯では昼なお暗い空から大粒の火山灰が降り注ぐ。
そして降灰域はどんどんと東へ広がり、噴火開始の翌日には近畿地方へと達する。
その後、首都圏でも20センチ、青森でも10センチもの火山灰が積もり、北海道東部と沖縄を除く全国のライフラインは完全に停止する。
水道は取水口の目詰まりや沈殿池が機能しなくなることで給水不能となる」
氏の指摘は今回明らかになった分布図と一致しており、たとえ熊本から遠く離れた場所でも被害が十分に及びうることを示しています。
研究チームは今後、約13万年前以降に日本で起きた他の12件の巨大噴火についても同様の調査を行う予定です。
いつ起こるか分からない火山の噴火を日頃から心配している人は、そう多くないかもしれません。
しかし、日本で巨大噴火が起こる日は必ずやってきます。
そのときのために、あるいは私たちの子孫に命を守るヒントを残しておくために、今から対策と準備を進めておく必要があるでしょう。
参考文献
わが国最大の巨大噴火の全体像が明らかに https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2023/pr20230412/pr20230412.html “700万人瞬殺”の悲劇を防げ──阿蘇山・カルデラ噴火の恐ろしさ https://www.gqjapan.jp/culture/column/20160606/mount-aso-the-supervolcano