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また興味深いことに、先行研究から消費者が製品に対して「新しさ」を感じる要因の一つとして「曖昧さ」があることが分かっています。
「曖昧さ」とは、製品の特徴を明確に評価することの難しさを指し、この程度が高いほど私たちは「製品が新しい」と感じやすくなるそうです。
しかし一方で、広告の背景画像がどのように製品の新しさのイメージに繋がるかは明らかになっていませんでした。
この疑問の答えを見つけるために着目されたのが「冷たさ」です。
同チームの研究者は以前、実際にある自動車広告の「冷たさを感じさせる背景」を見て、「新製品に新しさを強く感じた」といいます。
そこで私たちは「冷たさ=新しさ」という連想を無意識のうちに持っているのではないかと仮説を立て、調査を開始しました。
今回の研究では、「冷たさ=新しさ」の連想が消費者行動にポジティブな影響をもたらすかどうかを調査。
具体的には「広告の背景画像が、どのようにして消費者に製品の新しさを伝えているのか?」という問いを以下の4つの仮説に分解し、それぞれ実験によって検証しています。
まずは「冷たさ」と関連する背景が、本当に「新しさ」の知覚に影響を及ぼすのかが検証されました。
具体的には、スニーカーの広告に対して、寒さに関連する背景画像と暖かさに関連する背景画像のどちらが、商品に対してより新しさを感じさせるか比較しました。
その結果、たとえば雪景色の写真など、冷たさを想起させる背景によって、確かに製品に対する「新しさ」の知覚が高まることが判明しています。
次に、(1)で示された効果がなぜ生じるのかというメカニズムが分析されました。
すると、背景の冷たさが製品に対する「心理的遠さ」を連想させ、それが製品への「曖昧さ」を生じさせ、これが先行研究の示した「曖昧さ」と「新しさ」の関係に繋がることがわかりました。
この新しさを感じさせる効果は、広告がアピールしている製品の種類によって変わるのでしょうか?
研究では、広告製品の外観を「アンティーク」あるいは「モダン」に変えることで、背景画像による効果の強さが異なるかどうかを調査しました。
その結果、製品の外観がモダンであるときに、背景画像が新しさの知覚に及ぼす効果がより強く現れやすいことが分かりました。
反対に、製品の外観がアンティーク調のときにはこの効果はなくなっていました。
最後に研究チームは、この効果が消費者の製品購入予定時期によって変化するのではないかという仮説を立て、その影響の変化を調査しました。
その結果、背景画像による新しさの知覚は、製品の購入予定が遠い将来にある場合には買い手の評価を高め、近い将来に購入予定がある場合には評価を低下させることが分かったのです。
以上の結果を受けて、研究主任の外川拓(とがわ・たく)氏は次のように述べています。
「本研究の成果は、適切な広告画像を使用することで、製品の新しさ知覚を高め、購買意欲を促進させることが可能であることを示唆しています。
長期的な視点では、広告画像と製品知覚との関係を明らかにしていくことで、より効果的、効率的なマーケティング活動を実現することにつながるでしょう」
今回の研究は、広告の背景画像が与える影響を調べるために、かなり限定的でピンポイントな「冷たい背景」という題材だけが検証されていますが、今後の研究によっては、どんな広告の演出の仕方が、消費者にどんなイメージを与えるのか、自在に制御できるようなるかもしれません。
参考文献
背景画像の「冷たさ」が商品の「新しさ」知覚の向上に寄与:温度の感覚が製品評価に与えるメカニズムを解明 https://www.sophia.ac.jp/jpn/article/news/release/press20230410/元論文
The temperature of newness: How vision–temperature correspondence in advertising influences newness perception and product evaluation https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0148296323001595