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分析の結果、2種の毒鳥の皮膚や羽毛に「バトラコトキシン(Batrachotoxin)」という神経毒があることが判明しました。
これは中南米の熱帯雨林に生息するヤドクガエルと同じタイプの毒です。
同チームのカスン・ボダワッタ(Kasun Bodawatta)氏は「バトラコトキシンは骨格筋組織のナトリウムチャネルを強制的に開いたままにすることで激しい痙攣を起こし、最終的には触れた者を死に至らしめる」と説明します。
ヤドクガエルの場合は、皮膚に高濃度のバトラコトキシンを有しているため、少し触れるだけで筋肉の痙攣や心停止を起こしかねません。
わずか20マイクログラムで人間の大人を死に至らしめるほど強力です。
ボダワッタ氏は、今回の発見を受けて「ヤドクガエルと同じ神経毒が、かつて考えられていたよりも広く生物間に浸透している可能性がある」と指摘しました。
では、2種の毒鳥のバトラコトキシンはどれくらい危険なのでしょう?
またどうやって毒を獲得し、なぜ体内に持っていても平気なのでしょうか。
ヤドクガエルでは皮膚に触れるだけで危険ですが、2種の毒鳥では人を死に至らしめるほどの効力はありません。
ただし皮膚や羽毛を触りすぎると、手にかゆみや火傷のような刺激を受けるといいます。
それからボダワッタ氏いわく「羽毛を目の近くで扱っていると、タマネギを切っているときのように涙や鼻水が出てくる」のだそう。
このように毒性があまり強くないので、ヤドクガエルと同じく「毒が天敵への防御に役立っている」とは考えづらいです。
しかし同じニューギニア島に生息し、羽毛にバトラコトキシンを備える毒鳥の「ピトフーイ (Pitohui)」に関する先行研究では、「ノミやダニなどの羽に寄生する虫に対して効果があり、他の鳥と違って寄生虫からの被害を受けにくい」と指摘されています。
また地元住民によると、これらの毒鳥の肉は辛味のような刺激があって、舌がピリピリするので食べたがらないという。
そういう意味でも、毒が生存に役立っているのかもしれません。
毒を持つ生物には2つのタイプがいます。
1つは自ら体内で毒を生産できるタイプで、もう1つは食べたものから毒を獲得するタイプです。
ヤドクガエルやフグ、そして毒鳥は後者に属します。
ピトフーイの胃袋を調べた研究では、中にバトラコトキシンを生産することで知られる甲虫類(Choresine)が見つかりました。
さらに人工的な環境で飼育したピトフーイでは毒をまったく持たないことが明らかになっています。
よって毒鳥は食べた昆虫から毒を頂戴して、自らの体内に溜め込んでいるようです。
今回の2種も同じルートで毒を得ていると考えられますが、その正確な供給源はまだ特定されていません。
では、毒鳥たちは甲虫から頂いた毒を体内に蓄積しても平気なのはなぜでしょうか。
チームが遺伝子解析をしたところ、毒鳥にはナトリウムチャネルを制御する領域に遺伝的な変異があり、それが毒素に耐える能力を与えていることが分かりました。
これはヤドクガエルと同じ仕組みです。
ただし、その遺伝子変異はヤドクガエルとまったく同じ場所にはなく、別々の仕方で同じような毒への耐性と運搬能力を獲得したと見られます。
いわゆる「収斂進化」の一例です。
収斂進化とは、種の異なる生き物が別々の場所で同じ形質を進化させる現象で、有名な例としては「モグラとケラの前足」が挙げられます。
ケラは樹上生活を送る昆虫であり、モグラは言わずとしれた土中で暮らす哺乳類です。
両者はまるで違う生き物ですが、その手を観察してみると筋肉質で鋭く長い爪があり、運動のための力学的な構造がよく似ています。この二種はまったく異なる環境で暮らしているように見えますが、実際は環境に適応する方法が似ており、似た進化を起こしています。
新たに見つかった2種の毒鳥がどのように毒を活用しているかは不明ですが、ニューギニアの危険なジャングルの中ではきっと有効な使い方があるのでしょう。
参考文献
Danish researchers discover birds with neurotoxin-laden feathers https://science.ku.dk/english/press/news/2023/danish-researchers-discover-birds-with-neurotoxin-laden-feathers/元論文
Multiple mutations in the Nav1.4 sodium channel of New Guinean toxic birds provide autoresistance to deadly batrachotoxin https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/mec.16878