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NASAのソーラーダイナミクス天文台からの画像を使用することで、太陽の北極付近に地球の14倍にも及ぶ巨大竜巻が渦を巻いている様子が判明しました。
巨大竜巻は3日間かけてプラズマの雲を巻き込みながら成長し、太陽表面に「月サイズ」の白熱したプラズマ塊を落とし続けています。
動画を作成した天体写真家のアポロ・ラスキー氏は「何年にもわたって太陽を観察してきたが、このような太陽竜巻を見たことはなかった」と述べています。
いったいどのような仕組みで、巨大竜巻は形成されたのでしょうか?
目次
これまでの観測により、太陽表面では多くの巨大竜巻(太陽竜巻)が生成されていることが知られています。
太陽竜巻が発生する仕組みは風が起こす地球の竜巻とは大きく異なり、主に磁気とプラズマによって発生します。
太陽表面は強力ならせん状の磁場が渦巻いており、この磁場の渦に太陽表面の光るプラズマが吸い込まれると、らせん状の「太陽竜巻」となって観測されます。
太陽竜巻は太陽表面の各所に常態的に発生しており、通常はアメリカ大陸ほどの大きさと考えられています。
しかし新たに観測された太陽竜巻は大きさが地球14個分もあるものでした。
Solar tornado near the sun's North Pole. This thing was twisting and growing for 3 days.
Unlike tornadoes on Earth, tornadoes on the sun are controlled by magnetism. Solar magnetic fields twist in a furious spiral, dragging clouds of plasma around with them.© Apollo Lasky / SDO pic.twitter.com/LYdUUtbLEf
—Girl In Space (@ExploreCosmos_) March 20, 2023
海外メディアの報道によれば、竜巻の高さは12万km以上もあり、時速50万kmで移動していたとのこと。
(※12万kmは地球直径(1万2742km)のおよそ9倍ほどですが、上のラスキー氏の動画では、竜巻の高さが地球14個分と表現されています。この違いは太陽竜巻の大きさにかんする定義の違いだと思われます)
同様の太陽竜巻は別の天文写真家であるアンドリュー・マッカーシー氏によっても動画化されています。
This video glitches a bit because it was shot between clouds. It makes for challenging conditions, but I didn't want to miss an opportunity to bring you something so cool. I'm still working through all the data I captured yesterday, expect a super-high-resolution image soon
—Andrew McCarthy (@AJamesMcCarthy) March 18, 2023
マッカーシー氏が作成した動画ではプラズマが磁力線に沿って進んでいく様子がより鮮明に映し出されています。
またマッカーシー氏は、太陽竜巻からはしばしば「月サイズ」の白熱したプラズマ塊が太陽表面に向けて落下していく様子が観察されたと述べています。
太陽竜巻の温度は25万度に達した可能性があり、この温度は太陽表面の6000℃に比べて極めて大きくなっています。
ただ今回の太陽竜巻が過去最大かといえば、そうでもないようです。
2008年には上の図のように、観測史上最大の、高さ20万km(地球直径の15.7倍)に及ぶ太陽竜巻が発生したことが知られています。
太陽竜巻は、太陽表面から噴出するプロミネンスの周りで発生する様子も確認されており、太陽の磁場の変化が原因であると予想されています。
しかし、非常に珍しい現象であり、現在のところその発生に関わるエネルギー源や詳しいメカニズムについては、多くが謎につつまれています。
今後、太陽竜巻について理解が進めば、宇宙天気をより正確に予報できるようになるでしょう。
参考文献
SDO | Solar Dynamics Observatory