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この種類の橋では中央から観音開きになる跳開橋(跳ね橋)を思い浮かべる人が多いでしょう。
しかし世界には、多種多様な可動橋が存在します。
イギリスの建築家トーマス・ランドール・ペイジ氏が考案した可動橋は、「転がって」航路を確保することができます。
しかもモーターや電気を必要としません。
ここではイギリス・ロンドンの転がる可動橋「コーディドック・ローリングブリッジ」をご紹介します。
目次
イギリス・ロンドンのリー川には、かつて栄えた巨大な工業ドック「コーディドック」がありました。
そして少し前から、コーディドックの再開発プロジェクトが開始されました。
ドックを再スタートさせるには、敷地内の古いダムを撤去し、歩道橋を導入する必要があります。
しかも航路を確保するために、この歩道橋は可動橋でなければいけません。
当初は一般的な跳ね橋を設置するつもりでしたが、建築家トーマス・ランドール・ペイジ氏のユニークなアイデアを知った担当者は、彼が考案した転がる可動橋を導入することにしました。
コーディドック再スタートのシンボルとなるようなユニークで創造性にあふれたデザインが採用されたのです。
そして最近、転がる可動橋「コーディドック・ローリングブリッジ」が完成しました。
この橋は、川に沿って転がるよう設計されており、180度の回転によって橋床(きょうしょう)が天井へと変化します。
これにより航路が確保され、ボートは橋床に引っかかることなく前進できます。
しかも可動橋には電気やモーターが必要なく、人間の力だけで動かせるようになっています。
回転方向の両側にそれぞれワイヤーで繋がったウィンチ(巻き上げ機)があり、これを手回しすることで橋が転がるのです。
人力で回転する秘密は、「重量のバランス」と「可動橋下部のレールの形状」にあります。
通常の設計であれば、その重量のほとんどは橋床に偏り、スムーズな回転が難しくなります。
そこでペイジ氏は、正方形の枠の上部にバランスを取るための重り(バラストと言う)を取り付けています。
これによって重心が高くなり、回転しやすくなるのです。
またこの可動橋は、橋下部のレールに乗っており、その特殊な形状に沿って回転します。
モデルを見ると分かるように、レールは角の形にくぼんだ特殊な曲線となっています。
これにより、回転中心が一定のままスムーズに回転することができるのです。
直線的な地面であれば回転させるために「片方の角が持ち上がる」ほど大きな力で引っ張る必要があるでしょう。
しかしこの曲線レールであれば、「角をくぼみに落とす」程度の力で十分です。
とはいえ橋全体の重さは13トンもあり、人力で180度回転させるには「約20分かかる」とのこと。
「電気もモーターもいらない」とはいえ、膨大な労力が必要なようです。
長時間通行禁止になることも考えると、この可動橋は、めったに船が通らない場所に設置するか、巻取りを電気モーターに任せた方が良いとも言えるでしょう。
また「航路を妨げないほど高い歩道橋を設置すればよい」との意見も上がっています。
確かにその通りですが、新しい可動橋には「バリアフリー」のメリットがあるとも言えます。
結局は、「再開発プロジェクトにふさわしいユニークなデザイン」であることが一番の採用理由なのでしょう。
コーディドック・ローリングブリッジのようなユニークな可動橋は、今後も世界のどこかで誕生するかもしれませんね。
参考文献
Cody Dock Rolling Bridge