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最近、アメリカ・ニューメキシコ工科大学(New Mexico Institute of Mining and Technology)に所属するモスタファ・ハサナリアン氏は、本物の鳥のはく製をまとった鳥型ドローンを開発。
死んだ鳥たちの頭や羽でカモフラージュしたドローンは、野生動物の監視や研究に役立つかもしれません。
研究の詳細は、航空宇宙科学の国際会議「AIAA SciTech 2023 Forum」で発表され、2023年1月19日付でオンライン掲載されました。
目次
ドローン技術の向上に伴い、ドローンには自然環境や野生動物をモニタリングする役割が期待されています。
しかし従来のドローンでは、その異質な見た目と騒音によって、野生動物たちを警戒させてしまいます。
監視すべき対象や環境が本来の姿とはかけ離れた状態になってしまうのです。
これを防ぐ1つの方法は、ドローンを野生動物にカモフラージュするというもの。
いわゆる「鳥型ドローン」を開発すれば良いのです。
しかし中途半端な見た目では結局すべてが台無しになります。
そこで研究チームは、リアリティを追求した鳥型ドローンを開発するために、本物の鳥の体や皮膚を使った「はく製」を利用することにしました。
人間であればSFホラー一直線のアイデアを、鳥で実践したのです。
まずチームは、鳥の羽ばたきを模倣した「羽ばたきドローン」を開発しました。
コンピュータソフトウェアを使用して実際の動きをシミュレートし、翼の制御を継続的に改善できるようにもしています。
これにより鳥らしい動きを再現し、プロペラで生じる騒音をなくすことができました。
次に鳥のはく製を購入し、その頭部をドローンに繋げ、機械の体を本物の皮や羽で覆いました。
この方法で作成されたのは、「キジ」ドローンと「ハト」ドローンの2体です。
近づいて見ると本物そっくりとは言い難いですが、遠くから羽ばたいている姿を見ると、そこまで違和感はありません。
もちろん、鳥型ドローンの操作性やスピード、優雅さは、本物の鳥に大きく後れを取っています。
それでも現段階で、ホバリングや滑空、上昇気流に乗って高く舞い上がることまでは可能なようです。
重要なのは「この不気味な鳥型ドローンを自然の鳥たちがどうみなすか」という点ですが、今のところ、これらに関する報告はありません。
研究チームは、この研究を発展させる前に、倫理的な面を考慮した方針を打ち出す必要があると感じています。
「ドローンのために鳥を殺して皮を剝ぐ」ことに賛同できない人はきっと多いでしょう。
野生動物を欺けるレベルにまで到達するには、技術的にも倫理的にも高いハードルをクリアしなければいけないのです。
しかしチームが指摘しているように、動物ではなく、人間の目を欺くためにこれらの分野が発展していく可能性はあります。
他国の情報を入手するために大きな気球を飛ばすよりは、鳥にカモフラージュしたスパイドローンを飛ばすほうがまだ目立たないでしょう。
参考文献
Researchers are stuffing drones into taxidermy birds to make them seem more ‘natural’元論文
Taxidermy Birds as Platform for Flapping Wing Drones: A Bioinspired Mechanism for Wildlife Monitoring