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飛行機事故で死亡する人と生存する人にはどんな違いがあるのでしょうか?
アメリカのニュース雑誌「タイム」は、その疑問に回答すべく1つの調査を実施しました。
まず35年間の飛行機事故の中から座席表を分析できる事例を調査し、そのうち17件の該当データ(1985~2000年)から座席と死亡率の関係を分析しました。
すると、機体後部の死亡率は32%、中部の死亡率が39%、前部の死亡率が38%ということが判明。
さらに座席の列でも死亡率に大きな違いが見つかりました。
機体後部の中央通路側の死亡率が28%と最も低く、機体中部の中央通路側の死亡率が44%と最大になったのです。
これには様々な種類の事故が含まれますが、総合的には、普段人気のない機体後部の中央席が一番死亡率が低くなると言えます。
まずドゥルーリー氏は、このような結果に至った要因をいくつか挙げています。
しかしこれらの要因は、あまり一貫していないように思えます。その原因は座席の安全性が事故の種類によって大きく変化するからです。
これでは理解しにくいので、死亡原因で整理してみましょう。
アメリカの国家運輸安全委員会(NTSB)によると、飛行機墜落の死亡原因の68%は「墜落の怪我」ではなく「墜落後の火災」だと報告しています。
また火災や煙が発生しているケースでは、飛行機から安全に脱出できるのは2分以内とも言われています。
つまり死亡率の高い火災を想定するなら、翼(燃料タンク)の近くを避け、避難口の近い通路側を選択すべきだと分かります。
そして火災よりやや確率は低いですが、墜落時の怪我も依然として大きな死亡原因に違いありません。
これを想定するなら、衝撃の少ない後部を選択し、緩衝材の少ない通路側を避けるべき、という理解になります。
「通路側を選ぶか」もしくは「通路側を避けるか」という点については、事故の種類によって相反すると言えます。
しかし、死亡原因の確率を考えるなら、火災を想定した方が良いかもしれません。
これらを総合すると、「機体後部の通路側」が最も安全だと言えるでしょう。タイム誌の調査結果と重なりますね。
とはいえ、タイム誌の調査はサンプルサイズが小さいため、この結果は完全ではありません。
飛行機事故の状況はそれぞれのケースで大きく異なるため、同じ結果が得られないことが多いのです。
「死亡率は全くのランダムだ」と述べる科学者もいたり、「生存者のほとんどが飛行機の前部に乗っていた」という事例もあったりするほどです。
そう聞くとなんだか結局意味のない結論を聞いた、と思う人もいるかもしれません。
しかしそもそも、飛行機に乗って死亡する確率は0.0009%と、非常に低いのです。
(アメリカで)自動車に乗って死亡する確率が0.03%であることを考えると、飛行機事故を心配しすぎる必要はないのかもしれません。
死亡することがそもそも少ないので、正確に検証する材料も少ないというのが実際のところなのです。
そのため、今回の話しはフライトがどうしても苦手で、気分が落ち着かないという人が、お守りのような気持ちで「わずかに生存率が高い後部通路側を選んでみる」という使い方をするくらいでいいでしょう。
空が落ちてくる心配と同様に、空から落ちる心配も杞憂になる確率の方がずっと高いのですから。
参考文献
What’s the safest seat on a plane? We asked an aviation expert https://theconversation.com/whats-the-safest-seat-on-a-plane-we-asked-an-aviation-expert-198672