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小惑星とは太陽の周りを回る岩石質の天体であり、約46億年前に太陽系が形成されたときに残されたものです。
科学者たちはこれまでに60万個以上の小惑星を発見しており、その大きさも数m~数百kmと様々です。
そして研究チームは、その中でも直径300mの小惑星に着目し、これをスペースコロニーへと改造する大胆な方法を提案しました。
小惑星の中央をくり抜き回転させ、その中に人間を住まわせるというのです。
突飛なアイデアに思えますが、実はこれ、1976年にアメリカの物理学者ジェラード・オニール氏が提案したスペースコロニー「オニール・シリンダー」に触発されたものとなっています。
オニール・シリンダーは、2つの巨大なシリンダーで構成されており、回転することで遠心力を利用して内部の居住区に人工重力を与えるというもの。
日本人にとってはガンダムに登場するスペースコロニーと表現した方がわかりやすかもしれません。
しかし、それら巨大シリンダーの材料すべてを地球から宇宙へと運んでくるのは現実的ではありません。
そこでミクラブシック氏らは、「既に宇宙空間に存在している小惑星を土台として使ってしまおう」と考えました。
では、小惑星を使って人工重力を生み出すことなど可能なのでしょうか?
この点も、2019年に発表されたオーストラリア・ウィーン大学(University of Vienna)の研究結果に基づいています。
その論文では、「中央に円筒形の空洞をもつ小惑星を回転させることで、地球と同様の人工重力を生み出せる」ことが示唆されています。
とはいえ、ほとんどの小惑星は「固い岩の塊」というよりも、岩や石、砂の塊が弱い重力によって集まった「瓦礫の山」です。
そのためくり抜かれた小惑星は強度を保てず、回転するときに割れたり壊れたりするはずです。
2019年の論文ではこの大きな問題が放置されたままでした。
そこで今回、ミクラブシック氏ら研究チームの登場です。
彼らは新しい研究の中で、くり抜いた小惑星を超軽量・高強度カーボンナノファイバーのメッシュで覆う方法を提案しました。
「崩れやすいなら、飛び散らないよう円筒形の袋で包めばよい」というわけです。
またメッシュで覆われた小惑星の表面にはソーラーパネルが設置され、これによって居住区に電力が供給されます。
ちなみに小惑星を回転させる方法は、「小惑星表面に設置したロケット噴射」とのこと。
こうした技術の組み合わせにより、下図のような小惑星コロニーが完成するというのです。
研究チームは、これらの理論について「実現するために必要な技術は、物理学の法則を破るものではありません」と主張しています。
小惑星コロニーは現代の私たちにとって全くのSFですが、このSFを現実のものにするための物理学と力学は確かに存在しているというのです。
将来、彼らのアイデアが「妥当だった」のか、それとも単なる「フィクションだった」のか、はっきりとした答えが出るまでしばらくかかりそうです。
参考文献
Cities on asteroids? It could work—in theory
https://www.rochester.edu/newscenter/cities-on-asteroids-it-could-work-in-theory-543862/
Would YOU live inside an asteroid? Bizarre study that’s ‘on the edge of science and science fiction’claims the cities of the future will be on space rocks
https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-11541353/Bizarre-new-study-proposes-living-inside-asteroids.html
元論文
Habitat Bennu: Design Concepts for Spinning Habitats Constructed From Rubble Pile Near-Earth Asteroids
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fspas.2021.645363/full
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部