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その理由はおそらく、1シーズンに1個の卵しか産まないコウテイペンギンとは違い、産卵期が長く、その間に複数個の卵を産むからだと氏は説明します。
ペンギンの卵は、一般的な鶏卵と比べてサイズが大きいですが、それ以外の特徴はさほど変わりません。
ところが熱湯で茹でてみると、まったく違うことが起こるのです。
ヘッドランド氏によると、ペンギンの卵は約10分ほど茹でることで、中までしっかり火が通るという。
また卵の殻は鶏卵より厚くて丈夫なため、割るときには少し注意が必要だといいます。
しかし殻を剥いたペンギンのゆで卵は、卵白がやや緑がかった半透明をしており、まるでゼラチンを固めたようになっているのです。
卵白は半透明のまま白化しないので、中心部にあるオレンジ色の鮮やかな卵黄が透けて見えます。
なぜペンギンのゆで卵が半透明になるのかというと、それは卵白に含まれるタンパク質に関係があります。
鶏卵の卵白は主に「オボアルブミン(OVA)」というタンパク質から成り、全タンパク質の60〜65%を占めています。
これが加熱により凝固すると卵白が白くなるのです。
一方で、ペンギンの卵白にはオボアルブミンの他に「ペナルブミン(penalbumin)」というタンパク質が多分に含まれています。
ペナルブミンは「不凍タンパク質(Antifreeze protein:AFP)」の一種であり、南極のような極寒の地に暮らす魚やペンギンに見られ、氷点下の環境で生体が凍らないようにする働きがあります。
ヘッドランド氏いわく、このペナルブミンの割合が多いために、ペンギンの卵白は凝固しても、そのまま半透明を保つというのです。
これまでの研究で、ペンギンの卵白にはオボアルブミンが約30%、ペナルブミンが約25%含まれているのに対し、ニワトリの卵白にはペナルブミンが0.01%以下であることが分かっています。
こうした理由でペンギンの卵は、かき混ぜてスクランブルエッグにしたり、オムレツにしたりすると、鶏卵を使ったときと同じ見た目になるそうですが、ただ茹でるだけだと、シースルーのゆで卵に仕上がるのです。
ちなみに、ペンギンのゆで卵はお腹がとても空いていれば食べられなくもないですが、味はそんなに褒められたものではないそうです。
ヘッドランド氏によると「ペンギンはオキアミを主食としているため、味はかなり生臭く感じられる」という。
酢に漬けると臭みが減り食べやすくなるようですが、ニワトリの卵に取って代わるようなものではないでしょう。
参考文献
Boiled Penguin Eggs Have See-Through “Whites”, Just In Case You Were Wondering
https://www.iflscience.com/boiled-penguin-eggs-have-see-through-whites-just-in-case-you-were-wondering-66521
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
海沼 賢: 大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。