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カブトムシは硬い外骨格に守られていますが、ハチの強靭なアゴで脚に噛みつかれると、しがみつく力が奪われ、クヌギからポロリと落下していきました。
さらに凶暴なスズメバチはカブトムシを木から落とすだけでは飽き足らないようで、地上に落ちたカブトムシを執拗に追い回し、攻撃を続けていたのです。
当初10匹以上もいたカブトムシは、ハチの襲来からわずか数分で完全に排除され、樹液場を乗っ取られていました。
オオスズメバチによる排除行動は、観察を行った3日間の早朝すべてで確認されています。
では、もしオオスズメバチの襲来がないとすれば、カブトムシの活動時間帯に変化は出るのでしょうか?
そこでチームは、スズメバチ除けのスプレー「スズメバチサラバ(株式会社 KlNP)」を使って、オオスズメバチを樹液場から継続的に駆除する実験を行いました。
早朝〜正午にかけて、樹液場にやって来たオオスズメバチにスプレーを噴きかけ、クヌギの木に降り立つのを阻止しました。
その結果、夜行性と思われていたカブトムシの実に半数以上が、そのまま正午まで樹液場に留まり続けたのです。
このことから、カブトムシは根っからの夜行性というわけではなく、オオスズメバチがいなければ、明るい時間帯でも十分に活動しうることを示しました。
つまり、カブトムシは鬼の居ぬ間に食事を済ませ、スズメバチのやって来る明け方になると、そそくさとその場を退散しているようです。
これと別に、近年の研究で、シマトネリコという木に集まるカブトムシは、昼間になっても樹液を吸い続けることが明らかになっています。
シマトネリコにはスズメバチもやって来ますが、不思議なことに、彼らがカブトムシに危害を加えることはありません。
その理由について研究者は、シマトネリコはクヌギと違い、1本の木に多数の樹液場が存在するため、少ない餌場を取り合う必要性がないからだと説明します。
この点からも、カブトムシの活動がいかにスズメバチの影響を被っているかがわかります。
日本では”昆虫の王様”のイメージが強いカブトムシも、オオスズメバチには恐れをなして太刀打ちできないようです。
こちらは、樹液場のカブトムシがオオスズメバチによって排除される様子を捉えた映像。
参考文献
オオスズメバチvsカブトムシ 最強の昆虫はどっち?
https://www.yamaguchi-u.ac.jp/weekly/15652/index.html
元論文
Temporal niche shifts driven by interference competition: Giant hornets exclude rhinoceros beetles at sap sites at dawn
https://esajournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/ecy.3914
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部