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ということは、ガソリンスタンドで積極的に匂いを嗅ぐのは、危険なのではないでしょうか?
しかし、これについては心配いりません。
というのもガソリンに含まれる化合物はすべて、人体に無害な濃度でコントロールされているからです。
特にベンゼンの含有量はきわめて少なく、ガソリン全体の1%も満たしません。
それでもベンゼンは非常に強烈な刺激臭を持っているため、わずかな量でも、私たちの鼻で嗅ぎわけることができます。
また空気中で急速に蒸発するので、拡散も速く、私たちの鼻に届きやすいのです。
それでは同じように甘い香りを放つ物質がたくさんある中で、ベンゼンの匂いに惹かれる人が多いのはなぜでしょうか?
ガソリンの匂いに魅了される最大の理由は、ベンゼンに中毒性があり、脳に多幸感を与えるからです。
早い話が、ベンゼンを嗅ぐと「ハイ」になれるのです。
これまでの研究によると、ベンゼンを吸い込んだ場合、麻酔薬のように中枢神経系が麻痺し、脳の中脳辺縁系経路が活性化することがわかっています。
中脳辺縁系経路は一般に「報酬経路」として知られ、ここが活性化することで「ドーパミン」が分泌されます。
ドーパミンは”快楽ホルモン”や”脳内麻薬”の名で知られ、一時的な快感を与える神経伝達物質です。
つまり、ドーパミンにより得られる快感が中毒を引き起こすことで、何度でもガソリンを匂いたくなるのです。
ただし先ほど言いましたように、ガソリン中のベンゼンは安全な濃度でコントロールされているので、深刻な中毒になることはないでしょう。
それでもベンゼンを積極的かつ直接に嗅ぐことはやはり危険です。
興味深いことに、ベンゼンを含むものはガソリンだけではありません。
私たちの身のまわりで言いますと、ペンキやマニキュア、テニスボールなどに含まれています。
もしこれらを「いい匂い」と感じたなら、ベンゼンに魅了されている証拠でしょう。
参考文献
Why Do We Like The Smell Of Gasoline?
https://www.scienceabc.com/humans/why-do-we-like-the-smell-of-gasoline.html
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
海沼 賢: 大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。