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逆に、「本心を話してくれない」「いつも自分を大きく見せようとする」相手とは仲良くなりたいと思いませんね。
また、一方が自己開示したときに、もう一方も促されて自己開示することがあります。
「互いに自己開示する」ことは、関係構築において相乗効果が期待でき、これも自己開示を行うメリットの1つだと言えます。
では、近年一般化しているオンライン上のコミュニケーションにおいて、自己開示をどのように促せるでしょうか?
研究チームは、この点を明らかにするため、VRアバターを用いた比較実験を行いました。
実験には、54ペア(108人)が参加し、以下のコミュニケーションツールのうち1つを用いて対話してもらいました。
そして自己開示に関係するスコアを測定し、コミュニケーションツールの違いでどのような差が生じるかを調査。
その結果、自己開示に関係する3つのスコア(情報、思考、感情)において、似てないVRアバター、似ているVRアバター、ビデオチャットの順に自己開示が促されると判明したのです。
また感情と関係している「音声の大きさ」でも、おおむね同じ結果が得られました。
つまり、ビデオチャットで現実の自分たちが見えているよりも、全く関係のないアバターが見えている方が、素の自分をさらけ出しやすかったのです。
さらに2つのVRアバターは、「互いに自己開示する」のを促しましたが、ビデオチャットではその効果が得られなかったとのこと。
このことは、VRアバターが、友達や同僚、恋人といった「互いに自分のことを語り合える関係」を深めるのに役立つことを示唆しています。
加えて興味深いのは、参加者自身はコミュニケーションツールの違いによる変化を感じなかった、という点です。
つまりVRアバターには、無意識のうちに自己開示させる力があるのです。
この効果を利用するなら、職場の管理者が従業員の本音をより簡単に聞き出せるかもしれません。
さて、今回の結果から、VR空間でのコミュニケーションには、自己開示を促す大きな可能性があると言えるでしょう。
将来的には、カウンセリングや面接、マッチングサービスなど幅広い分野でのVRの活躍が期待されます。
日頃、VR空間でチャットしている美少女アバターは、もしかしたら、自己開示を促されたおじさんかもしれません。
参考文献
オンラインコミュニケーションツールを比較し、自己開示の効果を検証 ―VRアバターはビデオチャットよりも素の自分をさらけ出す。―
https://www.tcu.ac.jp/news/all/20220412-41945/
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部