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では、どうすればすっきりとした目覚めが可能になるのでしょうか?
脳の覚醒(目覚め)は、複雑な生物学的プロセスによって生じているので、そこにアプローチをかける必要があります。
たとえば科学者たちは、これまでの研究で、「脳の血流が覚醒に関係している」ことを発見しています。
過去の研究(NIH, 1997)で、起床後の脳の血流活動が、就寝前に比べて低下していると判明したのです。
また、起床時の「睡眠の段階」も覚醒に影響を与えていました。
私たちは浅い睡眠(レム睡眠)と深い睡眠(ノンレム睡眠)を繰り返しており、浅い睡眠の段階で目を覚ますと、眠気を感じずにすっきりと目覚められます。
さらに、年齢によっても目覚め方に違いがあります。
では、覚醒に関係するこれらの要素を踏まえると、どのようにして目覚めを改善できるでしょうか?
覚醒には、脳の血流・睡眠の段階・年齢が関係していると指摘しました。
科学者たちは、これらを目覚まし音(アラーム)によっていくらか調整できると考えています。
そして研究が進むにつれて、徐々に「ある種のアラームが起床後のパフォーマンスにプラスの影響を与える」という証拠が集まってきました。
たとえば、マクファーレン氏による別の研究(Clocks &Sleep, 2020)では、500Hz前後の周波数の音が、2000Hzよりも幼児を目覚めさせるのに効果的だと分かりました。
マクファーレン氏は、この効果が大人にも当てはまると推測しています。
一例をあげますと、500ヘルツは男性の穏やかな声で、1000ヘルツは女性や小型犬の声、2000ヘルツ以上は警報音や赤ちゃんの鳴き声などです。
※以下のサンプル音声は、イヤホンでの視聴をおすすめします。音量にご注意ください。
また、アラームのメロディも起床後の眠気の程度に影響を与えると判明。
「ピーピー」「ピピッピピッ」といった単純なアラームの音よりも、口ずさみたくなるような曲調の方が、眠気を感じることが少なかったのです。
他の研究でも同様の結果が出ており、そこでは「ポピュラーな音楽が短い昼寝からの覚醒に適している」と言われています。
ちなみに、リスナーが個人的に好きな音楽であればあるほど、覚醒の効果は高まったようです。
たとえばマクファーレン氏は、ジャクソン5の「ABC」のような曲が目覚めに効果的だと述べています。
さらに年齢によって覚醒に必要な音量は異なると分かっており、これは単純にアラームの音量を上下することで調整可能です。
さて、マクファーレン氏は、これらの要素を踏まえて、目覚めを改善する独自のアラームを開発しました。
マクファーレン氏が提案する「目覚めを改善して起床後のパフォーマンスを向上させるアラーム」の条件は次にまとめられます。
これらをできるだけ意識したアラームにするなら、目覚めが改善されるかもしれません。ぜひ試してみてください。
そしてマクファーレン氏は、研究の中で「目覚めを改善させるメロディ」をつくりました。
そのサンプルがこちらです。
その独特なメロディはYouTubeに投稿されており、ダウンロードサービス「Bandcamp」から購入することも可能です。
マクファーレン氏によると、一般的な「ピーピー音」のアラームよりも起床後のパフォーマンスを大幅に向上させるのだとか。
目覚めが悪くて悩んでいる方は、このメロディをアラームに設定すると良いかもしれません。
とはいえ、寝る前についついスマホをいじって睡眠不足になっているのであれば、まずはその習慣から改善する方がよさそうです。
スッキリと目覚めて、1日のはじまりをさわやかなものにしましょう。
参考文献
Is there such a thing as the perfect alarm tone? We think so (and this is what it might sound like)
https://theconversation.com/is-there-such-a-thing-as-the-perfect-alarm-tone-we-think-so-and-this-is-what-it-might-sound-like-178902
元論文
Auditory Countermeasures for Sleep Inertia: Exploring the Effect of Melody and Rhythm in an Ecological Context
https://www.mdpi.com/2624-5175/2/2/17
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部