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これらの理由によって、近年では多くのトレーナーがマズルコントロールはやらないほうが無難である。あるいはマズルコントロールをしないほうがよいとの見解が増えてきてます。ただし、マズルコントロール自体は上手に行えば、しつけとして有効なので愛犬にとって必要かどうかを飼い主さんが判断することもできます。
マズルコントロールが必要かどうかという観点は、しつけの明確な目的や着地点を考え、飼い主さんのスキルレベルと愛犬の性質や習慣、育った環境によって、相対的に判断することができるでしょう。試してみてうまくできそうかどうかや極端に抵抗していないかなどの状況を見て判断することもできるでしょう。
犬と飼い主さんとの序列を訓練する目的であれば、他のしつけの方法を選択することができますので、手段なのか目的なのかを明確にした上で、その子にあったしつけの方法を実施することが大切なポイントと言えるでしょう。
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マズルコントロールを行なう目的として、吠えつきやある程度の興奮を制御したり、マウスケアや投薬をスムーズに行なうことができるといったメリットがあります。犬の噛み癖をコントロールすることにも効果が期待できるでしょう。
また、飼い主さんに対する服従心を育むという効果があると言われてきましたが、これには賛否両論あるようです。最近の動物行動学の研究によると、マズルコントロールは親が子に対して優位性を確認するために行なっている行為であって、優位性を認識させる行為ではないという所見があるからです。このことから、飼い主さんがマズルコントロールを行なうことで、犬に優位性をしつける効果は希薄であると考えられています。
犬にとって、親子の関係性と犬と飼い主さんの関係性は同じ認識ではないことも分かってきました。親子犬を飼っている方は思い当たることがあるかもしれませんが、親子であっても犬同士には序列があり、子犬が大きくなって自我が目覚めてくると親に対しても、序列の優位に向かおうとする行動がみられます。飼い主さんの膝を取り合うといった序列の競争相手としての認識が行動からもみてとれるようになるのです。
マズルコントロールの効果は、犬の性格や経験によって大きく個体差があります。実施のスキルやプロセスによっても大きく差がでるので、トレーニングに対する適正や好みを考慮して行なうと良いでしょう。