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タナック、産業技術総合研究所、山口大学、岐阜大学が共同で研究し製品化に成功した「TANACBONE」(タナックボーン)は、日本人・アジア人の骨格形状と骨の質感をリアルに再現した模擬骨。
従来の模擬骨は海外製が多く「サイズが大きい」「質感が硬い」といった課題や、形状・硬さともにヒトの骨と大きな相違があり、医療従事者が納得のいく使用感がなかなか得られなかった。
タナックは日本人・アジア人のデータから形状を忠実に再現し、大学での製品評価を得て、これらの問題を解決。ニーズが高い脊椎や大腿骨を中心に、「TANACBONE」(タナックボーン)というシリーズ名で製品をラインナップ。
このタナックボーンは、医療教育への貢献のみでなく、インプラントの評価、医療トレーニングやシミュレーション、手術器具の開発などの精度向上が加速すると期待されている。
「TANACBONE」(タナックボーン)は、日本人の CTデータから作られた模擬骨で、一般的な整形外科用手術器具を使用しての骨切り・ガイドピンの挿入・ネイルやラグスクリューの挿入・カップやステムの設置・スクリューやプレートの設置・リーミング・アンカー設置・除圧などの手技練習用に開発。
簡易的でありながら、 臨床に近い感覚での練習が可能になるように設計され、筋肉・靭帯・神経などをつけることで、 さらに高度な練習も可能に。
密度の異なる2層の硬質発泡ウレタン素材でできた「TANACBONE」(タナックボーン)はそのほかにも特長がいろいろ。
海綿骨が柔らかく、切削 ・ スクリュー挿入 ・ラスピング・リーミングなどの手技練習を、より臨床に近い感覚で実行できる。
また、海綿骨が硬めのモデルで手技練習のほか、インプラントの強度確認などにも活用できるうえ、2層モデル・1層モデルともに密度の変更が可能。
さらにほぼすべての製品でレントゲン対応の加工が可能。加工後も密度や切削の感触などは、ほとんど変わらない。
いっぽう、展示会などでのインプラントの展示に利用できる透明モデルもラインナップ。支給されたインプラントをインサートしての成型加工もできる。
骨折線加工・穴あけ加工など、希望のデザインで骨折線を入れることもでき、下穴など細かな加工にも対応するという。
岐阜大学 医学系研究科 医科学専攻 整形外科学分野 秋山治彦 教授は、「TANACBONE」(タナックボーン)にこう推す。
「いままで使用していたモデルボーンは、形状・硬さともにヒトの骨と大きな相違があり、医療従事者および学生などが納得の行く使用感を得ることが難しい状況でした。
TANACBONEは、 CTデータを忠実に再現し骨質もヒトの骨に近く、質の高いハンズオンを行うことが可能です。 TANACBONEを多くの方にお勧めしたいと思います」
また、山口大学大学院 医学系研究科 整形外科学 西田周泰助教(画像右)は、タナックボーンにこう期待を寄せる。
「手術の練習、患者様への説明、日本人・アジア人向けの医療機器開発では、その人種・性別・年齢に特長を持つ骨格モデルを使用することが最適と考えます。
この度、 共同研究により患者データから作成した模擬骨が完成し、社会に出ることはたいへん喜ばしいことです。この模擬骨が社会に貢献する一助になれば、医療人としてたいへん嬉しく思います」
さらに、産業技術総合研究所 岡崎義光 先生は、「インプラントの力学的安全性の評価方法の一つである JIS T 0311 金属製骨ねじの機械的試験方法が2022年に改定されました」と伝え、タナックボーンの登場にこう期待を込めた。
「初版のJISは、2009年に制定されましたが、力学試験用模擬骨としては、 ASTM F1839に準じた海外製のみを引用していました。
今回の改正では、海外製に国産の模擬骨を加え、力学試験用模擬骨の力学特性とその評価試験方法を附属書に参考として示すことができました。
それにより、インプラントの評価方法、手術シミュレーションやトレーニング、手術器具の開発などへの大幅な活用が期待できます。
とくに、CT技術と模擬骨の製造技術を組み合わせることで、患者の骨格構造、部位別や骨粗鬆症などの病状に最適なカスタムメイドの模擬骨の製造が期待できます。
骨バンクなどを活用した生体骨を用いた力学試験では、数量的な制限がありますが、JISやASTMに準じることで品質が安定した力学試験用模擬骨が提供できる時代になりましたので、力学試験用模擬骨の積極的な使用を期待しています」
―――これまで海外の模擬骨に頼ってきた医療シミュレーション・トレーニングの世界。この岐阜発「TANACBONE」(タナックボーン)の登場で、日本の医療技術、手術の技が、さらに向上すると期待され、注目が集まる。
◆タナック
https://www.k-tanac.co.jp/