- 週間ランキング
350万稿以上の研究論文データを学習させた、学術論文に特化したAI英文校正・翻訳ツール「Paperpal」(ペーパーパル)や、英文校正・翻訳・文字起こし・出版支援サービス「エディテージ」(Editage)などを手がけるカクタス・コミュニケーションズ(Cactus Communications)が、「研究者の AI ツール利用実態」に調査結果を都内で発表。
発表会場には、湯浅誠 代表取締役、同社マーケティング部 岩田健太郎 シニアマネージャー、慶應義塾大学 医学部 早野元詞 特任講師らが登壇し、調査結果をもとに現状の課題や最新トレンドについてトークした。
インド・ムンバイに本社をおくカクタス・コミュニケーションズは、学術・製薬業界の情報発信支援に特化し、3000人の英文校正者と出版エキスパートをかかえ、81万人の大学・研究機関の研究者をサポート。
200万原稿の研究プロジェクトの出版と発信を支援し、ロンドン・プリンストン・シンガポール・北京・上海・台北・東京など世界9か国に拠点を持つグローバル企業。
そんなカクタス・コミュニケーションズが、2回目となる「研究者の AI ツール利用実態」を調査。その結果を公開した。
1)AI ツールだけを利用して論文投稿をしたことがある人は 8.8%とまだ少ないが、投稿経験者の 4人に 3人は論文がアクセプトされた経験を持つ
2)一年前と比べて、論文執筆における AI ツール利用度は、75%の人が増えた(とても増えた、やや増えた)と回答し、この一年でも急速に AI ツールの利用が浸透した
3)92.9%の方が AI ツールを効果的に使いこなせると研究キャリアの形成において有利になる(とても有利になる、やや有利になる)と回答
4)AI ツールを利用することで、6 割以上が「論文の質が良くなる」、「論文本数が増える」、論文執筆の「スピードが上がる」、「心理的ハードルが下がる」、「研究にかかる時間が削減できる」など作業効率・生産性の面でポジティブな影響を感じている。
いっぽうで、「投稿できるジャーナルのレベルが上がるか」かを問う設問では、「そうは思わない」「わからない」が 7割を超え、研究内容そのものの価値への影響はそれほど大きくはないことが分かった
5)ユーザーボイス AI ツール活用においては、複数の AI ツールを利用する、盗用・剽窃になっていないかの確認、英文の精度を上げるなどの意図・期待などから利用されている
6)ユーザーボイス AI ツールの利用有無が論文執筆にもたらす影響について、「日本語にない用語を英語で言語化できたので言語のハードルを越える以上の意味がある」、「非英語圏の研究者からの論文投稿がさらに増える」、といったポジティブな声があった
またいっぽうで、「AI が書く論文が氾濫して、論文自体の価値が下がりそう」、「論文数が増大しキャッチアップの効率化に追いつけないと二極化がますます進みそう」といった懸念を抱えるユーザーもいることが分かった
「今回の調査から、多くの研究者の英語論文執筆において AI ツールの活用が進み、ユーザーの「執筆スピードが上がる」「研究にかかる時間が削減する」といった作業の効率化と「論文本数が増える」「質が良くなる」といった生産性向上への貢献にポジティブな認識が広まっていることが確認できました。
また、今回の調査で「AI ツールを使いこなせると、研究キャリアで有利になる」と考える方が 9 割を超えていました。
アカデミアの領域では、業績発表手段として英文での論文出版がさかんに行われ、その結果として論文数と質が評価基準になっていますので、AI ツールのリテラシーの優劣により、歩むキャリアに差が出てくることが推察されます。
いっぽうで、AI ツールの浸透の裏にある課題や懸念も無視することはできません。今後、AI ツールによる効率アップ、生産性向上に伴い、世界中で提出される論文本数が増大すると考えられますので、論文を査読する側のリソース確保や、データの捏造や表現の剽窃(ひょうせつ)増大への対応と抑制する仕組みが必要です。
AI ツールとプロフェッショナルによるチェック・人的サービスを提供する弊社としては、AI の発展に合わせて、よりシーンに応じた人的サービス開発に力を注いでまいります」(カクタス・コミュニケーションズ 湯浅誠 代表取締役)
◆カクタス・コミュニケーションズ
https://cactusglobal.com/jp/