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このままでは将来、土用の丑の日からうなぎが消える?


各地で夏本番といった暑さが続いています。暑さで体調管理が難しいところですが、そんなときこそしっかり栄養価のよい食材をバランスよく食べて、スタミナをつけなければいけません。ということで、土用 (どよう)の丑(うし)の日には、栄養たっぷりのうなぎを食べて、体力を回復させようということで、「土用の丑」は日本のならではの食文化として、古くから根づいてきました。しかし、近年不安視されているのが、うなぎの漁獲量が減少している点。このままでは絶滅のおそれもあるといわれるうなぎですが、いまだにその生態が謎に包まれたうなぎを取り巻く現状とは?

日本の食文化「土用の丑」にはうなぎを

日本の食文化「土用の丑」にはうなぎを


絶滅の危機、ニホンウナギ

今年の土用の丑は7月25日と8月6日ですが、7月25日に食材を買いに行かれた方は、空腹を刺激する香ばしい“あの香り”につられて、店頭まで足を運んだ方も多いのではないでしょうか。残念ながら最近は価格が高騰していて、以前のように頻繁にうなぎを食することができなくなりましたが、土用の丑の日には、せっかくですから、うなぎをおなかいっぱい食べたいものですよね(7月25日を逃した方は、8月6日にぜひうなぎを!)。

さて、うなぎには様々な種類がありますが、土用の丑で食べられているのは「ニホンウナギ」という種類です。日本で食べられているうなぎのほとんどは「ニホンウナギ」なのですが、実はニホンウナギは今絶滅の危機といわれています。

「レッドリスト」と呼ばれる絶滅の恐れがある野生生物のリストには、ニホンウナギの他にジャイアントパンダやトキが指定されていて、ニホンウナギも国際自然保護連合(IUCN)が定める絶滅危惧種に指定されているのです。

ジャイアントパンダやトキの繁殖に成功するとニュースになるほどですから、どれだけニホンウナギが貴重なものであるかわかりますよね。一部の専門家グループの算定では、この30年間でニホンウナギの生息数は半分ほどに減ってしまったという調査もあったほど。土用の丑の日、スーパーにはたくさんのうなぎが並び、和食のお店でもやはりうなぎが目玉メニューとなりますが、うなぎを取り扱う業界としては非常に切実な悩みを抱えている現状にあるのです。

うなぎは絶滅の危機に……

うなぎは絶滅の危機に……


なぜ、うなぎは絶滅危機なのか?

でも、なぜうなぎが絶滅の危機に陥ってしまったのでしょうか?

■ひとつには「獲りすぎ」という問題があります。

なんと、日本で食べられているうなぎの量は、世界全体の7割に相当するといわれています。つまり、ほとんどのうなぎは日本人が食べているということになるのです。うなぎをこよなく愛する日本ですが、今後は適正な量を考えていかなければいけないのでしょう。



■もうひとつは、うなぎの「生態」に原因があるという問題です。

うなぎはいまだに、その成長過程について謎が多い生物なのだそう。うなぎの産卵は海で行われますが、生息するのは川。他の魚とは異なった大きな特徴が産卵地、生息地といえるでしょう。海での産卵の様子は、川に比べると人間が観察しにくいという難点があります。また、うなぎは卵 → 幼体 → 稚魚 → うなぎと成長していきますが、それぞれの成長過程で生態も異なるとされています。

ようやく少しずつうなぎの生態は研究が進んできたようですが、その謎多き生物ゆえに、研究者のみなさんは繁殖のための環境づくりに苦労されていることでしょう。

うなぎの稚魚「シラスウナギ」漁の様子

うなぎの稚魚「シラスウナギ」漁の様子


期待される養殖の進化

天然か、養殖か……。そんな言葉を耳にすることも多いうなぎですが、市場に出まわっている99%のうなぎは養殖です。そんなに養殖が多いならば、うなぎの数が減っても問題ないと思われるかもしれませんね。しかし、実はそうではないのです。

うなぎの養殖は、うなぎの「稚魚」からスタートするのです。ですから、うなぎの卵が減る、稚魚が減ってしまえば、結局養殖を進めることすらできなくなってしまうのです。

最近の実験では、独立行政法人水産総合研究センターで、卵からのふ化に成功したというニュースがありました。卵からうなぎへと成長させる「完全養殖」を進めていくには、まだ険しい道のりのようですが、少しずつうなぎの生態が解明されつつあります。うなぎ大好きな日本人の一人として、研究の進化におおいに期待したいところでもあります。

―― 日本の大事な食文化であり、夏の風物詩ともいえる「うなぎ」。貴重な生物であることを実感しながら、大切にしていきたいですね。

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