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蜂の巣に蜂の加はる光かな―3月8日はみつばちの日


3月8日は「みつばちの日」。蜜蜂は春から夏にかけて、盛んな繁殖と育児、そして訪花・採蜜活動を行います。かれらは美味しい蜂蜜をわたしたちに与えてくれるのみならず、他の蜂や昆虫、鳥らとともに植物の受粉を媒介して、農作物の生産に貢献しているのです。今日はみつばちの日にちなみ、春の季語「蜂」にちなむ句をご紹介します。


人追ふて蜂もどりけり花の上

「みつばちの日」は、全日本はちみつ協同組合と日本養蜂はちみつ協会(2014年1月から一般社団法人日本養蜂協会)により、「みつ(3)ばち(8)」という語呂合わせから、1985(昭和60)年に制定されました。全国各地で蜜蜂の供養や、はちみつのセールなどがおこなわれます。ちなみに8月3日は「はちみつの日」。

そもそも蜂とは、蟻を除いた膜翅(まくし)目の昆虫の総称を指します。世界には約十万種以上の蜂がいるそうです。そのうち日本では蜜蜂、足長蜂、熊蜂、雀蜂などをよく見かけますが、養蜂のための蜜蜂は、現在では西洋蜜蜂がほとんど。蜂は種類ごとに生活も習性も多様ですが、花蜂として花の蜜や花粉を食する蜜蜂は、一群の巣に一匹の女王蜂、数百匹の雄蜂、数万匹の働き蜂によって、整然とした高度な社会生活を営んでいます。

蜂にちなむ句のバラエティも、相当なもの。蜜蜂のみならず、様々な蜂について観察し比喩し連想し、時にはユーモラスに、時には達観して表現しています。自然に囲まれた昔は、刺される恐怖はあったものの、人は日々あらゆる場所で、蜂と遭遇していたことでしょう。そんな光景を次にご紹介します。


寒山か拾得か蜂に螫されしは

・土舟や蜂うち払ふみなれ棹       蕪村 ※2

・一畠まんまと蜂に住まれけり      一茶 ※2

・藪の蜂来ん世も我にあやかるな    一茶 ※3

・人追ふて蜂もどりけり花の上     太祇 ※3

・山蜂や木丸殿の雨の軒        太祇 ※3

木丸殿は、福岡県朝倉市にあった斉明天皇の行宮のことです。



・寒山か拾得か蜂に螫(さ)されしは   夏目漱石 ※2



寒山も拾得も中国唐代の高僧。よく飄々とした風貌に描かれていますが、そんな雰囲気の人物が漱石の周辺に居たのかもしれませんね。



・蜂飛んで野葡萄多き径(こみち)かな   寺田寅彦 ※2

・蜂のとぶグラバー邸を一周す       皆吉 司 ※1

・蜂が来るたび紅型の布乾く        横山白虹 ※1

・蜂は縞ゆるめずにとぶ童女の墓      飯島晴子 ※1



余談ですが、信州地方などでは、黒雀蜂(俗称、地蜂・土蜂・穴蜂)の幼虫を食用にする習慣があります。「蜂の子」といい、古くから貴重な蛋白源として、現在では健康食的な高級珍味として、根強い人気があります。



・日の出待つ蜂の子すでに凛々しくて    蓬田紀枝子 ※3


花圃の蜂土をあゆみてひかりあり

・日にあれば蜜蜂われをめぐり去る     長谷川素逝 ※3

・蜜蜂がくる燈台の茱萸の木に       高木良多 ※1

・花圃(かほ)の蜂土をあゆみてひかりあり 石原舟月※3

・蜂の巣に蜂の加はる光かな        若山たかし ※3



花圃は花畑や花園の意味です。花々を行きかい、勤勉に働く蜜蜂たちの黄金に輝く蜂蜜は、まさに自然界からの贈り物。いっぽう2000 年ごろから世界中で蜜蜂が減少し、食物生産に影響が出ることが懸念されてきました。減少の理由は諸説ありますが、国内では需給調整によって、ここ数年は花粉交配用蜜蜂の不足問題は起こっていないとされています。改めて、花粉媒介を担う蜜蜂の存在を、感謝を込めて再認識したいものですね。



<句の引用と参考文献>

※1 『第三版 俳句歳時記〈春の部〉』(角川書店)

※2 『カラー図説 日本大歳時記 (春)』(講談社)

※3 『カラー版 新日本大歳時記 春』(講談社)

『養蜂をめぐる情勢』平成28年10月 農林水産省 生産局 畜産部

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