はじめに
2016年7月17日、トルコで開かれている国連教育科学文化機関(ユネスコ)の第40回世界遺産委員会は、東京都上野にある国立西洋美術館を含む「ル・コルビュジエの建築作品」を世界文化遺産へ登録することを決定しました。
実は今回の登録は、国内初となる快挙を成し遂げた決定でもあるんです!
せっかくだから知っておきたい、国立西洋美術館を含む「ル・コルビュジエの建築作品」が世界文化遺産に登録された理由をご紹介します。
祝♡「国立西洋美術館」が世界遺産に登録決定!その理由とは▶︎登録されたスポット
この度決定した世界文化遺産の登録名は「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―」。
「近代建築の巨匠」と呼ばれたフランス人の建築家、ル・コルビュジエが設計した17スポットの建築作品を、日本やフランスなど7か国が共同で推薦。見事、登録されたんです!
日本の国立西洋美術館は、ル・コルビュジエが日本で唯一設計した建物。
ル・コルビュジエが基本設計を担当し、弟子が実施設計を行った本館が、世界文化遺産への構成資産として登録されました。
今回の国立西洋美術館の登録で、日本の世界遺産は20件目になりました。
祝♡「国立西洋美術館」が世界遺産に登録決定!その理由とは▶︎国立西洋美術館の概要
国立西洋美術館は、“西美”(せいび)の略称で知られています。
フランスとの国交回復の象徴として、1959年に完成した西洋の美術作品を専門とする美術館なんです。
地上3階、地下1階から構成され、鉄筋コンクリート造りの建物となっています。
ピロティと呼ばれる柱で支えられた開放的な空間や、らせん状に造られた回廊、そして自然光を取り入れるように設計された建築様式は、ル・コルビュジエの特徴と言える点が多いんですよ♪
ちなみに2007年に、国の重要文化財の指定も受けています。
祝♡「国立西洋美術館」が世界遺産に登録決定!その理由とは▶︎国内初となる快挙
世界文化遺産登録決定に伴い、7月18日には本館を見ようと約6,800人もの人々が駆けつけたそう。
朝から長い行列ができ、上野周辺や台東区はお祝いムードになっているんですよ。
確かに世界遺産への登録は快挙ですが、実はそれだけではなく、国内初となる快挙も成し遂げているんです。
それは、7か国17点の一括登録であることに加え、大陸にまたがる登録であること。
国境をまたいだ申請が認められた例はありますが、大陸までもまたがる登録は初めてなんです!
登録までの道のりは、なんと15年。
その間、3度も審査を受けてやっと登録された経緯もあるんですよ。
祝♡「国立西洋美術館」が世界遺産に登録決定!その理由とは▶︎2度の見送りを経て……
登録への道のりは長く、プロジェクトは2008年から始まりました。
日本やフランス、ドイツやスイスなど6か国が、ル・コルビュジエの22の作品を推薦します。
世界遺産への登録のプロセスとして、ユネスコの世界遺産委員会の審議の前に、ユネスコの諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)の審査を受けることとなります。
1回目の挑戦であった2009年は、推薦書の本質的な改定を必要とする「登録延期」を勧告されてしまう結果に。
2011年に2回目の推薦書を提出するも、結果は登録にふさわしくないとする「不登録」。
実は不登録が2回勧告されると、推薦ができなくなるというリスクがあるんです。
3回目のチャレンジで不登録となったら今後、世界遺産登録ができなくなることがあるため、いくつかの国から“推薦書を引き下げよう”とする声も上がりました。
ですが、そのリスクを受け止めた上で、3度目のチャレンジ。
見事登録が決定したんです……!
祝♡「国立西洋美術館」が世界遺産に登録決定!その理由とは▶︎ル・コルビュジエが気になる!
ル・コルビュジエは「近代建築の巨匠」と呼ばれた建築家で、フランスで主に活躍しました。
それまでの重い様式だった建物を、開放的で機能的な姿であるべきだと推奨し、1階を吹き抜けにするピロティなど、現代に通じる建築の基礎をつくりあげた人物なんです。
彼は建築や都市計画、画家など幅広い分野で活動し、現代のデザイナーにも影響を与えている人物のひとり。
後期の代表作であるフランスにある『ロンシャンの礼拝堂』は、蟹の甲羅をイメージした変わった形の屋根が特徴。
こちらも今回の世界文化遺産で、構成資産として登録が決定しました。
祝♡「国立西洋美術館」が世界遺産に登録決定!その理由とは▶︎世界遺産に登録された施設一覧
《日本》
・国立西洋美術館
《フランス》
・ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸
・ペサックの集合住宅
・サヴォワ邸
・ナンジェセール・エ・コリ通りのアパート
・ユニテ・ダビタシオン
・サン・ディエ工場
・ロンシャンの礼拝堂
・カップ・マルタンの小屋
・ラ・トゥーレットの修道院
・フィルミニのレクリエーション・センター
《ベルギー》
・ギエット邸
《ドイツ》
・ヴァイセンホフ・ジードルングの住宅
《インド》
・チャンディーガル
《スイス》
・レマン湖畔の小さな家
・イムーブル・クラルテ
《アルゼンチン》
・クルチェット邸
おわりに
15年もの時間をかけ、多くの国の担当者と協議してやっと決定した、今回の世界遺産登録。
現代に通じる建築様式を確立したル・コルビュジエのデザインは、今の私たちが見てもきっと感銘を受けるはずです♪
一度、国立西洋美術館へ足を運んでみてはいかがでしょうか?