はじめに
旅行はさまざまな感動や、他では得がたい経験を与えてくれるもの。現地の歴史、人々との交流など、学びの種類はさまざまですが、旅行に必要不可欠なお金に関する学びもそのひとつです。その学びは旅行期間中だけでなく、ふだんの家計管理にも役立ちます。今まで家計の見直しに目を瞑ってきた……という人も、旅はお金の上手な使い方を取得するチャンスだと考えてみて!
Text : 續恵美子(ファイナンシャルプランナー)
旅行に行くほどお金の使い方が上手くなる !?
読者の皆さんの中には定期的に旅行に出かける人が多いと思います。あらためて旅先での行動を振り返ってみると、旅の経験値を積むほど、お金の使い方に変化が出ることに気づいている人もいるかもしれません。
まず一番に挙げられるのが、旅先でのショッピング。最初の頃は、毎日目新しいものやご当地の名物を見る度に買っていても、除々に厳選して買うようになりますよね。次の行き先でもっといいものに巡り会えるかもしれない、かわいいけれど実用性はないかも……など冷静な視点があれば、ガマンをして後悔することもなくなります。こうした経験を繰り返すうち、本当に欲しいものだけを選べるようになるのかもしれません。少なくとも私が知る限り、旅の上級者になるほど旅先での無駄遣いが少なくなる傾向があるようです。
「使わないようにする」ではなく「どう使うか」が大切
なかにはドカンと大きなお金を使うことがプラスに働くこともあります。宿泊先を選ぶ時、料金が高めだけれども駅からの送迎やサービスが行き届いたホテルを必ず選ぶ人。仮に駅からもっと近いところにもっと安い宿泊施設があったとしても、重い荷物を抱えて自分で移動するのではリフレッシュよりも疲労感を覚えることもあるでしょう。ちょっと奮発して食事をしようと料亭の会席を注文したのはいいものの、次々出てくる料理にお腹がいっぱいで、おいしいかもわからなくなってしまう……なんてことも。実はこれは筆者自身の経験なのですが、張り切って高いお金を出したことに後悔し、こんなことなら軽くおいしいおそばを食べに行けば良かった! と思ったものです。
お金を上手に使うとは、金額の大小に限らず「それにお金を使うことで満足できるか」ということ。その満足の度合いは人それぞれに違うので、こうすることがベスト、と一概には言えません。高いお金を出すことを無駄遣いと感じる人もいれば、出したお金以上のメリットに満足する人もいるのです。どちらを選ぶにしろ、それは自分自身が旅先での経験から学んだ「満足できるお金の使い方」であるべきなのです。
旅はお金の管理術を身に付けるチャンス!
家計管理の基本は、1カ月のうちにどんな収入と支出があるかを把握することです。会社員なら収入は給料だけという人も多いですから、把握しやすいでしょう。しかし、支出となると、きちんと把握できているのは家賃や携帯の月額定額料金、保険料など自分で契約して決めて、金額がいつも変わらない費目だけ。食費や衣服費、交際費などは毎月どれだけ使っているのかわからないという人が多くいます。なかには光熱費や水道代さえ、大体の金額はわかるけれど、毎月の詳細はわからない、という人も。
そんな人にこそおすすめしたいのが、旅行経験値を上げることです。列車や飛行機などの交通費や宿泊代がいくらかかるか調べ、現地で買いたい物、行きたいところで必要な金額を調べ、食事に大体どれぐらいかかるか見積もりを立て、おこづかいも含めて全体予算を決めてみてください。できるだけ予算内に収まるよう旅行中もやりくりしている人や、旅行が終わって全体の支出がいくらだったか総額を計算する上級者もいるかもしれません。
1カ月の家計を見直す、となると目先の楽しさがなく先送りにしがち。ところが旅の準備となれば、自分が楽しめるかどうかに直結するので、やらないわけにはいきません。今まで家計の見直しから目を背けてきた、という人も、旅がお金の管理習慣を身に付けるチャンスだと考えてみてください。旅の予算計画とやりくりは、そのまま家計管理に活かせるはずです。
家計の予算を決めるときは、旅先でつかんだ「自分が満足を得られるお金の使い方」にならって、自分の譲れないポイントや節約ポイントを洗い出し、メリハリをつけるといいでしょう。予算を立てたら、それを守ることも大切です。旅で得た経験を活かし、厳選して必要なものを選ぶように意識することで、衝動買いを防げたり、無駄遣いや使途不明なものがなくなります。
旅先でついついお金を使ってしまうという人は、「FPに聞く! “言い訳出費“を抑える旅先でのお金管理術」の記事で紹介しているやりくりのコツを参考にしてみてください。
お金管理の上級者になって、プラスのスパイラルを作る!
お金の管理が上手いから旅先でもやりくり上手なのか、旅先で上手なお金の使い方を身に付けたからお金の管理が上手いのかは、「ニワトリが先か、タマゴが先か」のような問いでどちらが先かはわかりません。ですが、筆者がこれまでご相談を受けた人のうち、旅好きの人たちを見ていると、旅好きの人ほど家計管理が上手になっていっている傾向がうかがえます。
おそらく、旅で得た上手なお金管理術が家計管理にも波及していき、貯蓄上手になってまた旅に出る。このプラスのスパイラルが出来ていっているのかもしれません。旅で生まれた心の中のワクワク感をまた感じたいと思うことがプラスのスパイラルを作っているのかもしれませんね。
◆續恵美子(つづき・えみこ)
女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」認定ライター。ファイナンシャルプランナー(CFP)生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。
エフピーウーマンでは、女性のための無料マネーセミナー「お金のmanaVIVA(学び場)」(http://www.fpwoman.co.jp/viva/)を無料開講中!