はじめに
世界の少数民族や先住民の魅力を写真で伝えるフォトグラファー・ヨシダナギさん。先日、BEST作品集『HEROES』を上梓した彼女に、旅について、謎に包まれたプライベートについて2回にわたってインタビュー。
後編は、謎に包まれた彼女の私生活や、今後の活動に迫ります。
Text:横前さやか
Photo:中川文作
幸せになりたいと思わない
画像提供:ヨシダナギ
――――私生活が謎に包まれているヨシダさん。ここからは少しプライベートなお話を伺います。
現地で撮影をしている際、笑顔が印象的なヨシダさんですが、普段の生活の中で刺激や楽しさを求めたりしますか?
求めないです(笑)。楽しいことをしたいだとか、幸せになりたいと思わないんですよ。今のこのままでいいんです。
だって、うれしいことがあったらその分落ち込むことが怖くなって、落ち込むことがあったら疲れるじゃないですか。でもなんてことない毎日だったら疲れないから、ラクなままで生きたいんです。その状態で良いことがあったらそれはもちろんラッキーだし、落ち込むことがあっても大したことないと思えるかなって。感情の起伏のない状態で、日々を過ごしていたいです。 ――――では、仕事やプライベートの切り替えもそんなにないのでしょうか。
そうですね。自分自身では働いているっていう感じがさほどなくて。基本的に普段の生活から仕事モードになって真面目にならなきゃいけないだとか、切り替えるのがイヤなんですよね。「さぁ、気合い入れてやりましょう」だとか、緊張状態が苦手で、日常の生活の上にあるものが自分の仕事じゃないとつらいんだと思います。
カメラっていうのも、もともと私がアフリカに行ってなんとなく始めたことだったので、いざ今の仕事になった時もすんなり受け入れられたんだなと思いますね。 ――――ヨシダさんというと海外のイメージが強いですが、逆にプライベートで出かけたり、国内旅行をするのであれば、どういった場所に行きますか?
出かけるなら近場がいいですね。東京の原宿〜千駄ヶ谷が好きなので、その辺りかな。できることなら家から出たくないし、ソファーから動きたくないんです。いかに歩かず1日を過ごせるかが自分のステータスというか(笑)。
誘われたら出かけますけど、そもそも誘ってくれる人自体が少ないので機会は少ないですね。近くのカフェでひたすら話すとか、そんな感じのお出かけですね。
課金しないとクリエイターに失礼
――――では、最近ワクワクしたことは?
アプリ『どうぶつの森 ポケットキャンプ』のゲーム内のイベントですね。懐かしい昭和家具モチーフのキャラクターが登場しているので、とてもワクワクしています。しかも、めっちゃ課金してます(笑)。
課金しないと、クリエイターに失礼だと思っているので、どのゲームでもダウンロードしたら、まず課金から始まります。自分がクリエイターになって改めて感じているのは、モノを生み出すことは大変だということ。だからこそ、タダで遊ばせてもらうのは申し訳ないなと思うんです。クリエイティブなことにどのくらい価値を感じるかは人それぞれですけど、自分ができないことを成し遂げている人には、それなりのお金を払わなきゃいけないなと。
私は『どうぶつの森 ポケットキャンプ』で楽しく遊ばせてもらっているので、いくらでも課金します(笑)。
写真をプレゼントできたらそれでいい
――――今後、ヨシダさんはどのような活動をされていくのでしょうか。
私、目標がないんですね。というか、目標を立てる必要がないんです。別に写真も撮らなきゃいけないとは思ってもいないし。フォトグラファーは後からついて来た肩書きで、そもそも写真を撮ることはそんなに好きじゃなくて(笑)。
こんなことを言うと、「じゃあ、フォトグラファーじゃなくなったらどうするんですか?」って聞かれるんですけど、別にその肩書きは私にとって必要ないんです。肩書きがなくても、行きたい時にアフリカに行くだろうし、そこで個人的に少数民族のかっこいい姿を撮影して、お礼がてらに写真をプレゼントできたらそれでいいんです。
その写真を見て「俺たちってかっこいいんだな」と思ってくれれば、彼らの文化が1日でも長く続くんじゃないかなと思うから。
◆ヨシダナギ
1986年生まれ、フォトグラファー。幼少期からアフリカ人へ強烈な憧れを抱き「大きくなったら彼らのような姿になれる」と信じて生きていたが、自分は日本人だという現実を10歳で両親に突きつけられ、挫折。
2009年より単身アフリカへ渡航。独学で写真を学び、アフリカをはじめとする世界中の少数民族を撮影、発表。2017年に講談社出版文化賞【写真賞】を受賞。2018年4月にヨシダナギBEST作品集「HEROES」を発売。その他、写真集『SURI COLLECTION』(いろは出版)、紀行本『ヨシダ、裸でアフリカをゆく』(扶桑社)がある。