国立感染症研究所の研究者らが、天候や人々の移動と感染者数の関係を調べ、移動を活性化させるとしたGo To トラベルキャンペーンが、新型コロナウイルスの感染者数の増加には関係ないとまとめたことがわかった。この研究者らは、Go To トラベルが感染を抑制した可能性があるとも言及している。
常磐大学の栗田順子専任講師や国立感染研の研究者らは、「Effects of the second emergency status declaration for the COVID-19 outbreak in Japan(邦題:日本におけるCOVID-19流行に対する第2次緊急事態宣言の影響)」と題した論文を投稿し、査読前の論文(プレプリント)が公開されている。
この研究では、感染者数から割り出される感染の実効再生産数と、気候や人々の移動の相関を調べている。緊急事態宣言の発出時に、実効再生産数が低下しているが、Go To トラベルの開始時に、緊急事態宣言発出と同様に再生産数が低下している。
その他のデータの検証でも、Go To トラベルと感染拡大の間の因果関係は確かめられず、Go To トラベルが新型コロナウイルスの感染拡大に関係ないと結論づけている。さらに、Go To トラベルの開始や終了などの報道が、一般市民の感染防止の意識をよりかきたて、感染の抑制に寄与した可能性も示唆している。
査読(他の研究者らによる評価・検証など)を受けていない論文であり、実際の感染状況には多くの要素が関係していることを踏まえる必要がある。しかし、これらのデータは、「Go To トラベルによって新型コロナウイルスが感染拡大しており、旅行を止めれば抑制できる」といった考え方に対し一考の余地があることを示唆している。