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新型コロナウイルスの影響で、3月8日に予定されていたラストランが中止となってしまった東海道新幹線の700系。引退が前倒しとなり、別れを告げられなかった人も少なくないだろう。実はこの700系の廃材が、7月にデビューする新型車両N700Sの一部に使われている。新幹線の廃材が新たな新幹線の材料として生まれ変わるのは、世界の高速鉄道を見ても例がないという。
そもそも新幹線の車体には、部位ごとに異なる種類のアルミ合金が使用されている。例えば、構体(車体の外枠部分)に使われているのはマグネシウムとシリコンを混ぜた6000番台、床下は亜鉛とマグネシウムを混ぜた7000番台という種類のアルミ合金だ。
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▲客室内パネルには5000番台というアルミ合金が使われる
廃棄車両から出るスクラップ材は、こうした様々な種類の合金が混合した状態であるため品質が低い。鉄道車両に求められる品質を満たすことは難しく、これまでは鋳物やダイキャストとして再利用(カスケードリサイクルという)されていた。
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▲新技術によって廃材からビレット(金属材料)を精製し、新幹線の部品に再利用できるようになった
しかし今般、金属リサイクルを手掛けるハリタ金属が、スクラップ材の中から特定の種類の合金を抽出する技術を開発。JR東海や日本車輌製造、日立製作所などとともに、新幹線の廃材から新たな新幹線に再利用できる合金を取り出す(水平リサイクルという)取り組みを進め、N700Sで初めて実現させた。700系の廃材は、N700系の廃材とともにN700S普通車の荷棚パネルに使用されているという。
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▲700系とN700系の廃材が使われているN700Sの荷棚
N700Sはデビュー初日にまず4編成が導入され、2022年度までに全40編成が製作される予定。N700Sに乗って、荷棚として生まれ変わった700系に会いに行ってみてはいかがだろう。
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