ウィン・リゾーツは、アメリカ・ボストンのウィン・ボストンハーバーを日本メディアに公開し、日本での統合型リゾート(IR)の展開に向けた取り組みについて、ウィン・リゾーツの役員のほか、地元自治体や研究者などによって様々な観点から説明した。
ギャンブル依存症について説明したネバダ大学ラスベガス校インターナショナルゲーミング研究所のボー・バーンハード博士は、この10年から15年でギャンブル依存症に関する研究は大きな進展を遂げ、過去の誤った印象は正されつつあると指摘する。
問題のあるギャンブリングは世界で存在する問題で、シンガポールがカジノを合法化して以降、約600人の研究者が約300の論文を発表し、研究が広がっていったという。
ギャンブルは主に、「旅行者向けIR・カジノ」、「ローカルカジノ」、「ゲーミング場・パーラー」、「簡易なギャンブル提供場所」、「違法ギャンブル」の5つに分類され、「旅行者向けIR・カジノ」から順に、費用対便益が高いとした。特に「旅行者向けのIR・カジノ」は、観光産業としての利益を獲得できる一方で、コストは最小化できるという。日本のパチンコなどが属する「ゲーミング場・パーラー」は地域住民をターゲットとするため観光産業への効果はゼロで、「簡易なギャンブル提供場所」は雇用が多く見込めず、「違法ギャンブル」に至っては、多大な社会的費用を要し、税制上の恩恵も得られないとした。
日本に話を広げると、現在、パチンコやパチスロ機は約420万台設置されている一方で、IRでの設置台数は推定約3万台にとどまるという。アメリカでは、スロットマシーンの増加に伴い、一時的に病的もしくは問題のあるギャンブラー率は上昇したものの、その後一定を維持し、減少に転じている。シンガポールに至っては、2010年に最初のカジノが開業して以降、病的もしくは問題のあるギャンブラー率は減少している。「日本ではすでにパチンコが存在しており、最初の上昇は発生しているといい、減少を研究していくことが重要」(バーンハード博士)だとした。
シンガポールでは、2010年のカジノ解禁前からギャンブルが行われていたといい、カジノ解禁にあわせてギャンブル依存症の治療、予防、啓蒙のためのプログラムを作ったという。「バーでアルコール中毒の治療はしない」(同)として、日本でも治療施設を作る必要性を指摘した。アルコール中毒とギャンブル中毒には類似性があり、脳の同じ場所に原因が集中していることがわかってきているという。
問題あるゲーミングの米国全国評議会は、総合的な解決策として、”PETEORアプローチ”を提唱。Prevention(予防)、Education(教育)、Treatment(治療)、Enforcement(執行)、Operations(活動)、Research(研究)によって、問題あるギャンブラーは減らすことができるとまとめた。
ウィン・ボストンハーバーのJacqui Krumチーフ・リーガル・カウンセルは、ギャンブル依存症を防ぐために、ギャンブラー自身が限度額を決めることは、限度額を高めれば高めるほど、それに近い金額を使う可能性が高く、悪影響を及ぼしかねないと警鐘を鳴らす。従業員に対してトレーニングを行い、問題のあるゲーミングの特徴がわかると、例えば部屋の中が散らばる、洋服がおかしいといった些細なことから、ギャンブル依存症を発見できるとした。