3月8日午後に東京都内で開かれた、日本航空(JAL)が全額出資する中長距離線格安航空会社(LCC)、ZIPAIR(ジップエア)の記者会見一問一答は次の通り。
回答者は、いずれの質問も西田真吾代表取締役社長。
――元々欧州も視野に入れていたが、バンコク、ソウルを選んだ理由。欧州路線開設のスケジュール感は。
(ボーイング)787でエンジン2発の航空機。エンジン2発の場合、ETOPS運航の基準があり、実績を踏んで基準を満たすことで洋上飛行が可能となる。初年度は基準を満たしていないので、現実的に最寄りの空港に降りられる路線を選んだ。その中でなるべく中長距離LCCとして真価が発揮できる路線と検討し、最初の候補地がバンコクだった。ソウルはLCCの就航が増えて、需要の太さが非常に魅力的な路線。LCCとして大事なのは機材稼働を高めること。バンコク線とソウル線を組み合わせて稼働を高め、需要が多いところ、参入で需要が喚起できる地点を組み合わせた。長いところはETOPSの基準を満たしたあかつきになるが、大きな魅力ある路線が引けるので、太平洋を渡りたい。欧州もその先にはぜひやってみたい。
――「ETOPSの基準を満たした後は太平洋を渡りたい」ということで、具体的に北米のどの都市に飛びたいか。昨年からパイロットの採用を初めているが想定通り集まっているか。
北米の都市を具体的に申し上げる段階にない。運航乗務員の採用状況は、昨年10月から採用活動を始め、沢山の応募を頂いた。結果的に初年度就航するのに必要な30名を超える応募を頂いて、採用は完全に終わっていないが充分。
――価格設定の目安、赤坂社長は「JALエコノミークラスの平均運賃の半分以下を目指す」と以前言っていたが、今も変わらないか。
我々の目線はJAL、フルサービスキャリアの半分というイメージ。具体的なライバル、利用者を奪い合う相手はLCCになる。すでに申し上げた路線に就航しているLCCの価格設定を研究している。
――当初は787、2機体制で2路線。将来的に何機体制で何路線という目標は。
一気に何十機という発注をする航空会社もあるが、慎重に見えるがオペレーションの確実性を高めながら増やしていきたい。航空機は年に2機ずつ増やしていきたい。路線数は中長距離の組み合わせでいろいろ考えている。
――国内LCCがエアバス321LRを導入することを計画している。(ボーイング)787を選んだが、メリットをどう考えているか。タイ・エアアジアやスクートに勝つために、どんなことをしていくか。
(エアバス)321LRは、バンコクかその手前まで届くので競合する可能性がある。我々はETOPSの基準を満たした後、さらに長い太平洋を渡る路線をやっていくので、足の長い787を選んだ背景。787は機材が非常に良い。オペレーション側もそうだが、利用者も気圧や湿度でも快適な空間を楽しめる。短距離ではなく中長距離では違いを体感できる機材。
タイ・エアアジアX、スクート、ライバルはいっぱいいる。価格では負けないようにしたい。日本の航空会社としてきちっとしたサービス、お客様に納得いただける価格と品質、サービスのバランスをとっていきたい。サービスのコンテンツは申し上げられないが、座席も非常にしっかりした良いものを選べたつもり。まだ改修作業は始まっていないが、暁にはご覧いただけるようにしたい。自信をもって世に出せるものが作れていると思っている。
――ビジネスクラスを設定する方向か。フルフラットなのか、プレミアムエコノミーみたいなものか。
クラス構成について、まだ内緒ということではないが、ぜひ期待してほしい。従来の航空会社と少しスタンスが違うと思っていただける。
――従来の航空会社としてスタンスが違うと思わせたいということだが、従来のLCCより高級なイメージを目指すのか。
LCC利用者の一番の関心事、訴求ポイントは価格という前提はある。その中でどういうコンテンツが詰まっている航空機、航空会社なのか、我々が目指すところ。違いを生み出すということは、相当熱心に準備している。
――サービスの良さをアピールしたいとおっしゃっている。座席の話があるが、サービス面では。
国内LCCとして4社が先行している。切り開いたマーケットに非常に敬意を表するが、それに比べて相当ゆとりのある座席配置が作れていると自負している。(ボーイング)787のいいところは空間を大きく取れるということなので、活用してやっていく。
――3か月、1か月前に取らないと高いというのはLCCで変わらない。価格破壊とは一線を画すのか。
高くするという驚きを与えようと思っていないのでご期待頂きたい。価格が予約タイミングで動くというところはLCCモデルならでは。我々も需給変動を見て値付けしていく。
――2年以内に6機で黒字化というイメージを出されていたが、黒字化時期の機材はどれくらいか。JALが初期導入の787の改修するが、新造機を入れる考えはあるか。
2号機まではJALが使っていたものを譲り受けるという調達方法にしている。客室を改修して新しい航空会社としてサービスに使う。3号機以降は調達方法を検討中。検討の中にはJALグループで使っていたものを譲り受けるか、新造機を買うか現時点で決定していない。
社長の赤坂も昨年夏の記者会見で申し上げたが、「就航後2年で黒字化を目指せ」と言って頂いている。中長距離LCCでは高い目標だと理解しているが、挑戦するに値する目標。なんとか2年で黒字が出せるようにするにはどうしたらいいか。近づけるように。3年目には業績が安定したと言っていただけるように。
――太平洋を超えるという話だが、グアムなど太平洋を超えないところは中距離ではないという理解でいいか。
グアムやホノルルは検討の対象になる。グアムは東アジアのLCC勢がかなりの頻度で就航しているのでマーケットは存在すると思い始めている。グアム、ホノルルに飛ばしたとき、(ボーイング)787の稼働をどうできるかを考えて、次の路線を考えていく。
大西洋には多くのLCCが飛んでいる。アジア域内もLCCが多い。まだ太平洋を渡っているLCCはない。我々はパイオニアを目指していきたい。お客様にそういったLCCで太平洋を渡るというチャレンジに共感いただければ業績についてくる。
――採用に本腰を入れるようだが、マルチタスクな業務など、社員にどういうものを求めるか。
客室乗務員業務をやっていただく傍ら、それ以外の業務もやっていただく。我々はなるだけITやスマホなどのデバイスを活用し、対面、対人のタッチポイントは置き換えてようと思っている。空港のチェックインカウンター、客室の中は一番お客様と濃い接触ができるタッチポイント。お客様を数字で分析する、あるいはウェブの履歴ですることもちろんやっていくが、お客様のその時の反応、顔色、表情が唯一取れるのが空港や客室。気づきを得たら、自分で品質の改善、サービスの追加の企画、実装に携われるサイクルを考えている。よって我々が来て頂きたいのは、マルチタスクと言う表現が正しいが、自分で気づいたことを自分で実装するまで一緒に走ってもらえる人材を求めていきたい。
――昨年9月の会見で旅客収入のほかに、BtoBの収入でビジネスモデルを築くことができないかと言っていたが、その後にビジネスモデル、新しい収入をどう考えているか。関連して貨物事業はどう考えているか。
お客様から直接収入をいただくわけではないが、企業間同士の取引の中で収入を上げていく方法はないかということを考えている。それが業績の下支えをしてくれるものになる。相手があるので具体的なことはご容赦いただきたいが、話し合いや相談先は複数ある。日本の航空会社として日本企業とまずいろんなものを組み上げて、世界にそれを見て頂きたいと考えている。貨物収入、787は豊富なベリースペースを持っているので販売していきたいと思っている。
――787-9、-10といった長胴機の導入は視野に入っているか。
(ボーイング)787-8、2機で事業を始める。3号機以降は検討中だが、幅としてはいろいろある。コンフィグレーションなるべくを揃えていったほうがいいということもあるので悩んでいる。
――社名に東京と入れているが、成田以外の国内の拠点を持たないのか、就航しないのか。
社名に東京と冠したのは、日本の航空会社として一番有名な情報発信都市である東京と付けるとインバウンドの方にもどこの航空会社なのかひと目で分かる。日本の航空会社と認識してもらえるだろうということがあった。東京以外に日本国内で基地を持たないかは、2機で始めるので可能性を排除するわけでないが、基本的に成田を中心にやっていこうと思っているので、まずは東京を全面に出していく。
――成田空港の発着ターミナルは第3になるのか、第2になるのか。
入居するターミナルは実際にはもう心づもりがある。航空会社の集まりがターミナルごとにあり、連絡、報告ができていない。業界の都合だが、容赦いただきたい。
――JALとの協業。ジェットスターはマイル提携をやっているが、そういったJALとの協業は今後どうなるか。
マイルやJALとのサービスとの接点、私はJALのマイレージ事業部にいたこともある。JALのJALマイレージ会員がどれだけJALグループを使って頂いているか、愛して頂いているかを充分承知している。JALと違うブランドでサービスをやっていくので一定の違いを出していこうと思っている。一緒にできることを考えている。まだサービスの発表まで少し時間をいただくが、完全に関係ないというつもりはない。
――会社の資本政策、外部企業の資本を入れる可能性や構想は。
現時点ではJALの100%子会社。別の質問のBtoBのサービス、収益、こんなことを考えているという紹介をしたが、そういったパートナーが一緒にやってもいいという深さ次第だが、資本も入れて一緒にやっていくというパートナーがあればご一緒したい。実際いくつかの会社と視野に入れて話す状況にきている。
――ETOPSは今までの経験でどれくらいで認められる目処が立つか。
ETOPS運航は基準がいろいろある。基準も条件によって認める期間を短縮される場合もある。推測で物を言うわけにいかないが、初年度1年はきちんと実績を残すことが必要だろう。なるべく早く基準を満たしたいと思っているが、それくらいみておかなければいけない。
――就航先としてソウルは小さい飛行機で行けて、韓国のLCCも含めて一杯飛んでいる。バンコクも結構いろいろ中距離LCCがある。繋ぎなのかわからないが、なぜこの2ヶ所なのか。
すでにLCCが飛んでいる路線なので、そう思うのも不思議ではないが、日本のLCCが就航し始めたときに飛んだ所は、東京発で福岡や札幌など需要が太いところだと学んでいる。バンコクはすでにLCCが飛んでいる。さらにフルサービスキャリアも目一杯飛んでいる路線なので相当需要が太く、成長が毎年まだ続いているので参入の意味がある。ソウルは逆に成田発はフルサービスキャリアは相当少なくなってきていて、LCCが多く飛んでいる路線。ソウルに行くにはLCCでいいという人が需要、お客様がマーケットに沢山存在していてすごく需要が太い路線。
ETOPSを満たしたらこの路線はなくなるかというのはそういうことではない。例えば東南アジアから日本経由で太平洋を渡る需要を掴まなければいけない。太平洋を往来する交流人口が増えていけばいくほど我々にチャンスがあると期待。
――バンコクからアメリカへの需要があるということ。乗換なしでも行けるということもある。将来的な旅客のイメージは外国人も多いが視野に入れているか。
基本的なLCCのビジネスモデルは発地と着地で片道の需要がベースのお客様になる。さらに乗り継ぎはお客様に少し不便を与える。
太平洋を飛んでいるLCCはない。東アジアからもない、東南アジアから太平洋を渡っているのはないということが重要。我々がもし基準を満たして飛ぶことになれば、LCC同士の乗り継ぎで太平洋を渡る日がきっと来る。
インバウンドのお客様。中長距離LCCとして存在する意義の一つに、日本のインバウンドの目標の一部でもいいから担うというつもりでいる。我々は成田空港にベースに置いて、日本までインバウンドの方をお連れして、各地へとやっていきたい。日本のマーケットとのバランス、どちらのお客様にもご利用いただきたい。日本での認知を高めて、日本のお客様に鍛えていただき、品質を高めるのも一つ。インバウンドのお客様に日本のLCCは面白いと使っていただきたい。
――パイロットの採用、新規採用は置かれるか。30名は以前JALに勤めていた人もいるか。
昨年10月から採用活動を始めて、応募締め切りは昨年のうちに終わっている。応募頂いた皆様の選考をやっている。1・2号機に必要な人員の目処はついているので、当面は採用予定はない。3号機、新路線というときにお声がけをする。元JALの乗員も門戸を開いていて、そういった皆さんからの応募もたくさん頂いている。選考は元JALグループの乗員だからという優先的なものはない。ご入社いただく方にもそういう方が含まれる。
――北米、ロスやサンフランシスコへ2021年夏スケジュールに飛びたいと思っていることか。
希望としては思っているというのが正しい。自分たちで決めれるものではなく、認めていただくもの。現時点で何年にどこと明言できない。気持ちはある。