ボルボはスウェーデンの大手バッテリーメーカーである『ノースボルト』と合弁会社を設立して、次世代のボルボ車等のフルEVに電力を供給するための持続可能なバッテリーを開発・製造する計画を発表した。50/50の出資比率で開始する合弁事業の第一歩として、ボルボとノースボルトとでスウェーデンに研究開発センターを設立。2022年の操業開始を目指すという。
TEXT:川島礼二郎(KAWASHIMA Reijiro)
ボルボは2030年までに全車をフルEVにする
ご存知の方にとっては今更だろうが、本稿を始める前に、ボルボについて復習しておこう。ボルボの設立は1927年である。2020年の世界販売台数は約100か国で66万1,713台と、マツダの約半分ほどの規模である。2010年からはZhejiang Geely Holding(浙江吉利控股集団有限公司)の傘下にある。
2019年には、ボルボ初となるフルEV SUVの『XC40 Recharge P8』を発表、翌年には市販を開始している。2030年までに全モデルを完全EV化すると発表している。
年間最大50ギガワット時規模の工場を新設する
ここからが本題。冒頭に記したボルボとノースボルトとが共同で設立する研究開発センターは、両社のバッテリーに関する専門知識に基づいて構築される。その目的は、ボルボ車とポールスター車で使用するための、次世代の最先端バッテリーセルと車両統合技術を開発すること、である。
年間最大50ギガワット時(GWh)の容量を備えた新しいギガファクトリーを設立して、2026年に生産を開始する計画も、合わせて発表された。それに先立つ2024年から、スウェーデンにある既存のノースボルトのバッテリー工場から、年間15ギガワット時(GWh)のバッテリーセルを調達することも検討しているという。
上述したように、ボルボは2030年までにフルEVのみを販売することを目指している。一方で今日、ボルボのフルEV用バッテリーの生産は、自動車のライフサイクル全体の炭素排出量の大部分を占めている。そこでボルボは、持続可能なバッテリー生産のリーダーであるノースボルトと提携して、ヨーロッパの生産施設の近くでバッテリーを生産することで、バッテリーの調達と将来の自動車の生産に起因する環境フットプリントを削減することを目指している。
新しいギガファクトリーは、100%クリーンエネルギーを動力源とし、約3,000人の従業員を雇用する予定である(新工場の場所は未定)。合弁会社を通じて開発されたバッテリーセルを搭載した最初のモデルは、ボルボのベストセラー『XC60』の後継EVになる。
ノースボルトとの提携は、プレミアムEVセグメントのリーダーになり、2030年までにフルEVのみを販売する、というボルボの野心の鍵を握っている。また、社内開発能力を拡大するための重要なステップとも位置付けられている。