「灯油も良いけれど、キャンドルも素敵だぜ!」というわけで、アウトドアでキャンドル・ランタンを灯して楽しもう……と思ったのだが、吾輩はキャンドル・ランタンを持っていなかった。というわけで、今回はIKEAに買いにいくところがスタートする。
TEXT &PHOTO◎伊倉道男(IKURA Michio)
吾輩はスズキ・ジムニーである。1986年の生まれで、型式はM-JA71C。金属のルーフも当然エアコンもない。「4WD→2WD→4WD」と手動で切り替えるパートタイムの四輪駆動車である。錆も進み、ボディもあちこちが凹んでいる。これからゆっくりと余生を送ろうとしていたが、週に1回、アウトドア・フィールドに出掛けることとなる。
灯油ランタンをご紹介させて頂いた時に、「灯油も良いけれど、キャンドルも素敵だぜ!」と吾輩自身は「持ってもいない」、「知識もない」のについ言ってしまった。まぁ、いつか使ってみるかとは思っていたのだが、やはり責任がある。そこでスウェーデン発祥の「IKEA」がキャンドル・ランタンに力を入れていると聞いたので、出撃することにする。
ご存知のように「IKEA」は、まるでアトラクションのように商品展示ルートを進んでいく。キャンドル・ランタンの売り場はそのルートのほぼ最終章。「キャンドルを~♬」と大滝栄一さんの「恋するカレン」(『A LONG VACATION』)を頭の中で口ずさみながら進む。途中、たどり着く前に空腹でランチ。開店と同時刻に入店して、ちょうど良い時間が過ぎると、なぜかそこにレストランがあるのである。
スウェーデンと同じ北欧の国、フィンランド。トーベ・ヤンソン作の「ムーミン」。その中に出て来る「スナフキン」は、ソロキャンパーが目指すところでもある。また北欧は家具類もハイセンス。自然を大切にしていることもあり、アウトドアに取り入れられるグッズも多い。きっと「スナフキン」も灯油ランタンかキャンドル・ランタンを使っているに違いない。
さて、クルマの世界にフェラーリやロータスやジープがあるように、キャンドルにも色々な種類がある。和ろうそくを除いても、「ベーシックキャンドル」「フローティングキャンドル」「カップキャンドル」「グラスキャンドル」「モチーフキャンドル」。その上にアロマや無香料。原料もパラフィンオイルや植物由来の物。専門店もあるくらいなので、IKEA製品はその入り口なのかもしれない。
とりあえず、使用目的はアウトドアが前提である。風のことなども考えた上で、デザインでランタンを選び、それに合ったキャンドルを探すのが楽そうだ。使用するキャンドルの種類や香料は、それに合った物を選べば良い。
一番最初に手に取ったキャンドル・ランタンは「スィッネスロー」と言うモデル。お値段は灯油ランタンの3分の1(!)くらい。スクエアでシンプルなデザイン。キャンドルは、ベーシックキャンドルのラウンドタイプを使う。これ普段自宅の玄関での使用もよいではないか。「クリスマス」や「大晦日」から年越しで灯す。キャンドルはフェノメーンと名付けられた直径約7cm、長さ15cmがちょうど良い。これで約45時間も燃焼する。1日8時間ほど灯しても5日間は楽しめる。
「スィッネスロー」よりも小さめのランタンの「エンルム」も目に留まる。これもポイッと買い物袋に入れる。金めっきのテーブル置くタイプ、「ペルルバンド」もポイッと入れる。ようし、これでタープの先端あたりのポールだね、ちょっと自分から離れた所に、大きな「スィッネスロー」を灯す。小さめのランタンタイプの「エンルム」はテーブル脇の少し高めの位置だ。「ペルルバンド」はテーブル上、料理の横に置く。これでキャンドルを使う光の演出は完璧と思われる。夜が楽しみだ。
「エンルム」と「ペルルバンド」はティーライトと呼ばれるキャンドルを使う。(「エンルム」はデザインは同じで、ブロックキャンドルを使う大きいタイプが新発売されました)。小さなアルミのカップに入ったキャンドルだ。燃焼時間は約4時間。照明というよりも、光と影を楽しむタイプ。何を選ぶにしても、キャンドルは照明としては暗い。余裕があれば香料入りのティーライトを「エンルム」で少し離して使い、テーブルの「ペルルバンド」は無香料のキャンドルを使う、これが良さそうだ。
ここでちょっと疑問が生じる。キャンドルの明るさはなんで決まるのか? 太いキャンドルは明るく、小さいキャンドルは暗い。それって不思議である。燃焼物が同じなら、明るさは同じになるはずである。芯の太さの違いかと両キャンドルを比べてみる。燃焼させる前は、むしろ太いキャンドルの芯の方が細いくらいなのである。芯はストローのような役目をして燃料を上に吸い上げる。そして芯自身も燃えていく。太さが同じなら、芯がより燃え難いものを使えば炎は長くなり明るくなる。芯が太ければ、より多くの燃料が気化しやすいい。比べなくてはいけないのは、燃焼させている時の芯の物量なのであろう。
実際に燃焼させてみると、黒く残った芯の部分は太いキャンドルの方が、太くて長い。使用前の芯の太さは、コーティングされた蠟(ロウ)の厚みが加味される。これに迷わされていたわけだ。
作り手として、燃料を何を使うか、芯は何を使うか、作るキャンドルの使用目的は?メインの照明なのか、サブとして使うのか。それに適した明るさはどのくらいなのか。組み合わせは無限に近くなるのだろう。ここにもいにしえの人達の努力と研究心、そして長い経験を見てとれる。
モーターから始まったクルマの歴史も、内燃機関がその主流となり、そしてまたモーター、水素へ。新しい技術へ移る時、もしかすると、いにしえの人達のアイデアや努力が、ヒントとなることもある。
それにしても、キャンドルの炎は読書のようだ。大きく小さく揺らめきながら、心の旅へと誘ってくれる。
ー吾輩はスズキ・ジムニーである。型式はM-JA71C。揺らめく炎は時を停めるー