今回の新兵器は金属探知機である。宝探し……もとい、戦国時代の鉄砲玉の調査をしてみたい。八王子城での調査の結果は如何に?
TEXT &PHOTO◎伊倉道男(IKURA Michio)
吾輩はスズキ・ジムニーである。1986年の生まれで、型式はM-JA71Cだ。金属のルーフもエアコンもない。エンジンは550ccだが、ターボは装着されているのだ。パートタイムの四輪駆動車、「4WD→2WD→4WD」と手動で切り替える仕組みである。錆も進み、ボディもあちこちが凹んできているので、ゆっくりと余生を送ろうとしていたが、週に1回、アウトドア・フィールドに出掛けることとなった。
今回の新兵器は金属探知機である。子供の頃、海外のテレビドラマや映画の中に出てきた夢の機械だ。だが、今となってはこれで砂浜や河原で何かを探してみても、ちょいとつまらない。それで今回は歴史探訪の旅へと出掛けることになる。
今から4百数十年前の話である。戦国時代はいつ終わったのか?「天下分け目の関ヶ原」で、「豊臣勢」の西軍、「徳川勢」の東軍の戦だ!と思われるがこれは正しくはない。この時、すでに「豊臣」は統一を果たしており、まぁ、「関ヶ原の戦い」は「徳川」のクーデターと言えばクーデターだ。
では「戦国時代」がいつ終わったかと言うと、「豊臣」に最後まで屈しなかった「小田原北条氏」が小田原城を開城し、東北の「伊達政宗」が「ごめんねぇ、出遅れちゃって」と「豊臣秀吉」に謝っちゃった時である。でも、この「小田原城」では大きな戦闘はなかったようなので、最後の戦国時代の戦いはどこ?ということになる。和田竜による歴史小説、映画「のぼうの城」にもなった行田の忍城(おしじょう 小田原城開城まで落城せず)、そしてたった一日で落とされる八王子城での戦いである。
八王子城主の「北条氏照」は小田原城(実家だね)に主たる兵力を連れて籠城しているので「八王子城」は手薄になっていたのは確かだろう。だが、簡単に落とされてしまうのはそれだけではない。「北条氏照」は「織田信長」の交流の記録が残っており、「織田信長」に鷹を贈った記録がある。想像ではあるが「北条氏照」はすでに「織田信長」の天下統一を確信しており、これからは外交の時代と考えていたのではないかと想像する。
戦う城よりも外交の館を優先して八王子城を築いた感が強いのだ。八王子城に向かう道は「楽市楽座」を想像させるようなまっすぐな道。大手門からの緩やかで風光明媚な大手道。そして接待を重視した主殿。天守とした防衛の山は、まだ完成していなかったのではないかとの見解もある。
「北条氏照」の以前の居城は名城10にも数えられる「滝山城」である。ここは完全なる山城で鉄壁の守りとして知られている。半面、戦い上手として知られていた「北条氏照」は趣もある人だったようで、山城「滝山城」の中に池を作り、舟を浮かべて風情を楽しんでいた面もある。戦えば強く、そして風情を楽しむ、そんなところは「織田信長」と通じる部分がある。もしも「本能寺の変」がなかったら、この「北条」が支配する関東と「織田信長」の関係はどうなっていたのだろう? そんな想像をしてみるのも歴史ファンの楽しみでもある。
近頃、「北条勢」と「豊臣勢」(前田利家、上杉景勝の連合軍)の武器の違いがわかったようだ。鉄砲の弾である。「北条勢」は柔らかい金属、銅や鉛などで、「豊臣勢」は主に鉄の弾を使用していたらしいのだ。「北条勢」は戦いの前に「寺」などから、金属類を借りて来て、どうやら「弾」に鋳造し直したようなのである。寺には、「戦いが終わったら、返すからね」と文書も残っているという。当然、全滅したので踏み倒したわけだ。
さて、金属の違いによる「弾」の命中率の差はどうか。火縄銃の射程距離は鉛や銅の弾でも約50メートルならほぼ命中するようだ。鉄は鉛や銅よりも硬いので、射程距離はもっと長くなると考えられる。
戦闘となると、より高い所にいる「北条勢」は有利である。しかし、弾は貴重なので、充分に敵を引きつけてから「撃て!」と考えていたと思う。ところが、「豊臣勢」は鉄の「弾」で射程距離が長い。思ったよりも遠方から射撃を開始したのであろう。あっという間に勝敗は決まってしまう。もちろん、人数、武人の力も大きく関係はしてくる。
この八王子城の落城により、「北条勢」は戦意を喪失。小田原城を明け渡したとも言われている。「豊臣勢」は八王子城を落とした証として、「首」を持って行って見せたと言われている。
さて、吾がチームはここを調査してみたいと考えた。そこで金属探知機を入手して、この周辺に金属が埋まっているのかを調べることにする。もちろん、ここは保護地域なので、たとえ調べるだけでも許可がいるだろう。そこで場所を代えて調査をしてみた。結果は残念ではあるが、リングプルと釘。だが、しっかりと金属探知機が機能することはわかった。
だが、この金属探知機が「金銀財宝」に反応するのか?は確かめられてはいない。そんな高価な「金銀財宝」が身近にないのだ。
しまった! 水中で使える金属探知機を入手しておけば、ボートで出掛けていき、難破船も調べられたのに。またしても「豊かさ」とはほど遠い、「浪費生活」が続いていくのである。
ー吾輩はスズキ・ジムニーである。型式はM-JA71C。トレジャーハンターではないー