フルモデルチェンジを果たしたばかりのホンダ・ヴェゼル。手頃なサイズのSUVとして高い人気を誇ったモデルだ。ここでは、あらためて先代モデルのアウトラインとその魅力を探っていこう。
室内の広さと使い勝手は抜群、低燃費のハイブリッドも秀逸
2013年12月の発売から間もなく満7年。そろそろフルモデルチェンジの声も聞こえてくるヴェゼルだが、19年の新車販売台数はSUV部門全体の第一位を獲得。20年上半期はRAV4に王座を明け渡したものの未だに高い人気を維持している。その秘密は、まず広い室内と大きなラゲッジルーム。BセグメントのSUVといえば、後席の広さは必要十分レベルのモデルがほとんどだが、ヴェゼルはひとクラス上のCセグメントに匹敵するほど広い。ラゲッジルームも高さが700mmに満たないモデルが多い中、ヴェゼルは830mmを確保。しかも後席の折り畳みがダイブダウン方式だから、畳んだ時にもラゲッジフロアと段差が付かず、ロードバイクも大きなサイズでなければ前輪を外すだけで積めてしまう。居住性と荷役性の点では、Bセグメントでは向かうところ敵なしなのだ。
もうひとつの魅力は、BセグメントSUVで唯一、ストロングハイブリッドを用意していること。しかも7速デュアルクラッチトランスミッションとモーター/ジェネレーターを組み合わせたオリジナルのシステム“i-DCD”で、ステップ変速による小気味良い走りと、ハイブリッドならではの低燃費を両立。ユーザー参加型燃費記録サイトでは、20km/lを越える例も珍しくない。内外装デザインにも古くささは感じられず、長期にわたって人気を維持しているのも納得である。
搭載エンジンで変わる乗り味、乗り心地や快適性は常に進化
1.5ℓ自然吸気エンジン車の動力性能は、BセグメントSUVの中でもなかなか活発。燃料噴射システムに直噴式を採用し、吸気カムシャフトにはLo-Hi切り替えVTEC機構を採用。最高出力95kW(129ps)は、ポート噴射エンジンなら10年前の1.8ℓクラスに匹敵する。それでいて車重は1200kg前後と軽量だから、加速もハンドリングも軽やかだ。
一方でハイブリッドモデルは、明らかにCセグメントまでターゲットに入れた仕様。エンジンはアトキンソンサイクルに特化したエコ仕様ではなく、自然吸気エンジン車と同じ直噴のハイパフォーマンス仕様を組み合わせる。モーターアシストも含めたシステム最高出力は112kW(152ps)と、まさしく2.0ℓ自然吸気並み。しかも応答性の高い電気モーターが16.3kgmのトルクでアシストするから、加速の力強さは2.0ℓを凌駕すると言ってよい。
2019年、追加となった「ツーリング」グレードは、1.5ℓの直噴ターボエンジンを搭載。最高出力は127kW(172ps)と、シリーズ随一の高出力だ。ボディの補強や遮音対策は欧州仕様と共通化しており、走りのしっかり感や俊敏さ、上質な乗り心地もシリーズ最高峰にある。その他のグレードも、デビュー当初の乗り心地の硬さは感じられなくなった。特に「Z」及び「RS」はボディにも補強が加えられたため、上質感や快適性も高まっている。
ボディカラー:スーパープラチナグレー・メタリック
オプション装備:Gathersナビゲーションシステム/ドライブレコーダー/フロア
カーペット/特別塗装色(3万8500円)
インパネ
後席は、低くてフラットな床面により足元は広く、空間にはゆとりがある。後席はリクライニング付きでスライドはしないものの、前後席に大人が座ってもフットスペースには余裕が残る。
前席は、やや高めのアイポイントと厚みもある大きなシートが美点で、快適な座り心地が得られる。写真はウルトラスエードの「TOURING」専用コンビシートで、質感の高さを味わえる。
奥行きと荷室高に余裕があり、通常時でも393ℓの荷室容量を誇る。ハイブリッドは、ガソリン車よりもフロアが少し高くなっていて、開口部からフロアまでは後者の方が少し深い。床下には、洗車用品などが入るサブトランクも用意する。
安藤 眞はこう買う!
ホンダ車らしいスポーティな走りを味わいたいなら、「TOURING」がイチオシだが、今のタイミングで買うなら消滅が決定しているi-DCDのハイブリッドを選びたい。7速DCTとモーターアシストによる活発な走りは、向こう5年ぐらいまでは十分通用するだろう。4WDが必要なら「RS」は外れるから、選択肢は「Z」一択だ。
※本稿は2020年10月発売の「モーターファン別冊統括シリーズVol.128 2020年コンパクトカーのすべて」に掲載されたものを転載したものです。車両の仕様や道路の状況など、現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。