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内燃機関超基礎講座 | スーパーチャージャーという過給機、その成り立ちと特質


ターボチャージャーと双璧をなす過給機・スーパーチャージャーについて、成立と過給機としてのキャラクターを考えてみよう。


TEXT:松田勇治(MATSUDA Yuji)

過給機は、流体との間で連続的にエネルギーを変換・伝達させる「流体機械」のうち、空気を扱う「空気機械」の一種である。JISの定義では、圧力上昇が100kPa以上のものを圧縮機(コンプレッサー)、それ以下のものを送風機(ブロワー)、その中で10kPa以下のものをファンと呼ぶ。




いわゆるスーパーチャージャーの主流であるルーツ式は、内部圧縮を行なわないためブロワーに分類される。この点は「モディファド・ルーツ式」であるEATON製スーパーチャージャーも同様だ。




機構面では「容積型ポンプ」に属する。容積型とは、この場合ハウジングとローターで形成される空間の拡大縮小による体積変化を利用する機構のこと。一行程あたりの吐出量が一定で、つまり時間あたりの吐出量は回転速度に比例する。内部圧縮がないために、吐出口では高圧側の空気が内部に逆流するため、圧力比が大きくなると効率の低下とともに大きな吐出騒音を発生する。ルーツ式ブロワーで過給圧を高めることの困難さが理解できるだろう。




ちなみに「ターボ型」は、流体がインペラーを通る間にエネルギーを与え、圧力の高いところへ送り出す機構を指す言葉だ。通常のターボチャージャーは、吸入した空気が回転軸に垂直な半径方向へ流れることで、「遠心型」に属する。

上はEATONが行なった、スーパーチャージャー(SC)過給とターボ過給によるレスポンスの違いの実験結果を表すグラフ。青線がSC、赤線がターボだ。横軸は時間を、縦軸はエンジンのインテークマニホールド内部の圧力を表す。90kPaあたりまでほぼ同等に立ち上がっているのは、エンジンが本来持つ能力ゆえだろう。SCはそのまま順調に圧力を高め、0.2秒で最大圧力の90%程度、0.4秒時点ではほぼ最大圧力に達している。対してターボは圧力上昇が緩慢になり、90%程度に達するまでに1.3秒もの時間を要している。畑村耕一博士いわく「これでもガソリンエンジンのターボとしてはかなり上出来な反応」とのことだが、あらためてターボラグの大きさが理解できる。

メルセデスもごく初期からスーパーチャージャーの開発を進めてきた歴史がある。上の図版は、1920年代のスーパーチャージャーの構造図だ。2葉のローターを持ち、全体の構造としては現代のスーパーチャージャーと大きくは変わらない。

1922年のタルガフローリオの生産車部門の優勝車で、95psのスーパーチャージャージド・エンジンを搭載していた。レースカー部門では、4.5無過給エンジン車と1.5S/C過給エンジン車を出場させている。

ルーツ式ブロワーの歴史をたどると、原点は16世紀にイタリアのラメリーが著書に記した円筒型ロータリーピストン式揚水ポンプに求めることができる。1636年にはフランスのパッペンハイムが「歯車式ポンプ」を発明。1859年にはイギリスのジョーンズが歯数を2枚とした石炭ガス圧縮機を発明する。そして1860年、アメリカのルーツ兄弟が考案した溶鉱炉冷却用送風機がローブ輪郭ローターを備えていたことで、現在に至る基本形式が完成した。




自動車用エンジンには、ゴットリーブ・ダイムラーによって初めて1900年に組み合わされた。市販車としては、1921年のベルリン・ショーで公開されたメルセデス6/25/40psシュポルトが初搭載。




コンペティションの世界では、1923年9月のヨーロッパGPにおいて、直列8気筒2ℓエンジンに過給機を組み込んだフィアット805が、過給エンジンによる初の勝利を達成している。

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