アウトドアでもっとも大事なのは「寝る」。そこで重要なのはマット。ウレタンタイプ、エアタイプ、いろいろあるけれど、ここは手抜きせずに考えて試しておく必要がある。
TEXT &PHOTO◎伊倉道男(IKURA Michio)
吾輩はスズキ・ジムニーである。1986年の生まれで、型式はM-JA71Cだ。金属のルーフもエアコンもない。4WD、2WDを手動で切り替えるパートタイムの四輪駆動車である。錆も進み、あちこちが凹んでいるので、ゆっくりと余生を送ろうとしていたが、週に1回、アウトドアフィールドに出掛けることとなる。
かなり昔にはなるが、日産「セフィーロ」のコマーシャル。キャッチコピーは糸井重里さんで「くうねるあそぶ」(食う、寝る、遊ぶ)。
井上陽水さんの不思議な雰囲気とマッチして、ちょっとワンランク上の生活に憧れたものだ。
キャンプシーンにおいても「くうねるあそぶ」は重要な要素だ。特に失敗できないのが「寝る」である。「食う、遊ぶ」は多少失敗しても、笑い話で楽しいが、「寝る」だけは失敗すると、せっかくのアウトドアライフが台無しとなってしまう。
テント泊や車中泊では、環境の変化で「寝る」はかなり影響される。精神的にいつものように眠れないこともある。また、物理的にも問題点はある。「背中に石が当たって寝心地が悪い」「どうも寒くて」「蒸し暑くて」など、いつまでたっても寝付けない。また朝起きると身体のあちらこちらが痛いとなると、「もうアウトドアなんて、やめちゃいたい」となってしまう。そうなる前に解決できるところは手を抜かず、試して、考えておく必要がある。
そこでアウトドアフィールドで心地良い朝を迎えるために必要なのは以下の3つの項目。
1)まずは体温を維持するアイテム。これはシュラフ。
2)下からの冷気を遮断するアイテム、これがマット(寝心地を良くする役目も兼ねる)。
3)寝心地を最上級にするキャンピングベット。ハンモックも選択に入るだろう。
このなかでマットは地味だが、最も気を使わなくてはいけないアイテムだ。吾輩はマットを持参せず、情けない思いをした経験がある。晩秋の北海道。キャンピングベットと羽毛のシュラフでいけると思い、マットは持参しなかった。マットなしではシュラフは下からの冷気を遮断できず、本来の実力を発揮できない。羽毛のシュラフは、体重で羽毛が左右に逃げてしまい、下はぺったんこ。化繊のシュラフよりも冷気を遮断できない状態になることがある。情けない夜を過ごした。2日目の晩はマットの代わりにダンボールを何枚か重ねた。ダンボールは優秀である。
「マット」というアイテムは、非常に悩ましい。素材により寝心地が違う。ウレタンタイプは軽いがかさ張る。長く使うとへたってくる。
エアマットは「寝る」ためのアイテムで、最も耐久性が低いのではないかと感じてしまう(朝起きたらエアが抜けている)。そうなると寝心地どころか下からの冷気の遮断もできなくなってしまう。消耗品なのだろうが、気に入った物に出会ったら、やはり長く使いたいのが人情だ。しっくりくるマットは出会いも難しいが、長期に渡る使用も難しい。
さて、ウレタンタイプでも、エアタイプでも何を試しても満足できない寝心地をどうするか。積載量に余裕があるのなら、複数のマットを持参し、重ねて使用するのが良さそうだ。タンデム用のウレタンマットの上にソロ用のウレタンマットを重ね、厚みを確保する。また、ウレタンマットの上にエアタイプのマットを使うのも良いと思う。
世間の評判がどうであれ、マットを手に入れたら、一度硬いフローリングなどの上で昼寝をしてみることをお勧めする。
ー吾輩はスズキ・ジムニーである。型式はM-JA71C。名前はまだないー