自動車メーカーが電動化へ舵を切った現在、次々と魅力的な電気自動車(BEV=バッテリー・エレクトリック・ビークル)が登場している。まだまだ高価なモデルが多いEVだが、買いやすいモデルも出てきている。今回は、「コストパフォーマンス」という観点で考えてみよう(編集部調べ)。
いまもっともたくさん電池を積んでいるのは?
BEVがなかなか一般に普及しない理由は、一充電で走れる航続距離と価格だ。航続距離の長いBEVを作ろうと思ったら、大量のバッテリーを搭載する必要がある。バッテリーの価格はまだまだ高いので、どうしても車両価格が高くなってしまう。また、バッテリーは重いので、車両重量も嵩み、バッテリー増量分に比例して航続距離が伸びるわけでもない。
自動車メーカーは、コスト、航続距離のバランスを探りながらBEVを開発している。
では、現在日本で買えるBEVでもっとも航続距離が長いモデルはなんだろう? あくまでもモード電費ベース(WLTC、輸入車でWLTP参考値もあるが、ここでは同じ扱いにした)で見ると、
1位:テスラModel Sロングレンジ 610km
2位:テスラModel Xロングレンジ505km
3位:日産リーフ e+X 458km
となる。
では、バッテリー容量はどうだろう? もっともバッテリーを搭載しているのは?
1位:テスラModel S ロングレンジ 100kWh
テスラModel X ロングレンジ 100kWh
3位:アウディe-tron Sportback 55 quattro 95kWh
となる。
バッテリーをたくさん積めば航続距離は伸ばせるわけだから、ここにコスト=車両価格という指標が入ってこないとBEVの潜在購入顧客層には参考にならない。今回は、BEVのベーシックグレードの価格を基準に、「BEVコストパフォーマンス」を考えてみた。ベーシックグレードは装備が簡素過ぎて実際は上級グレードが売れている……ということもあるだろうが、ベースグレードで計算してみた。
電池1kWhいくらか?
まずは、BEVでもっともコストがかかり、もちろん航続距離を左右するバッテリー容量についてだ。ここでは
ベースグレード車両価格(税込み価格)÷バッテリー容量(kWh)=1kWhいくらか?
を出してみた。
たとえば、もっともたくさんの電池を積んでいるテスラModel Sロングレンジ(車両価格1035万円)は100kWhの電池を積んでいるから
10350000÷100=10万3500円
となるわけだ。
まずは、TOP5から
プジョーe-2008は、ベースグレードのAllure(アリュール)の車両価格が429万9000円。搭載しているバッテリー容量は55kWhだ。
日本のBEVの先頭を走ってきた日産リーフ。そのベースグレードである「S」の価格は、332万6400円。バッテリー容量は40kWhだ。
最近、車両価格の引き下げを行なったテストModel 3スタンダードプラスは、429万円。バッテリー容量は55kWhである。
e-208の電池容量は50kWhでe-2008と同じ。それでいてe-208Allureの価格は389万9000円というなかなか戦略的な価格だ。
1位は、日産リーフe+。バッテリー容量は62kWh。価格は441万1000円だから、1kWh=7万1145円。7万円台前半なのはリーフe+だけ。BEVのパイオニアとして、造り続けてきただけのことはある。
では、18モデルのリストも載せておこう。
ここで注意が必要なのは、言うまでもなく1kWhがいくらか、でクルマの価値が決まるわけではないということ。装備、走行性能、ドライブフィール、ブランド価値……などクルマの評価軸は多層的だ。あくまでもひとつの参考指標である。
では、航続距離1km=いくらか?
これも、ひとつの参考指標である。今度は1km=いくらか?だ。
この場合のいくら?は、 1km走るのに、どのくらいの電気代がかかるのか、ではなく、1km走る実力を得るのに、いくらの車両価格を払うのか、ということだ。
たとえば、Honda eの場合は
ベースグレード価格が451万円、WLTCモードの一充電走行距離が283kmだから
4510000円÷283km=1万5936円
となるわけだ。
この数字が小さくなればなるほど、コストパフォーマンスが高まるというわけだ。現在のBEVのパフォーマンスの最重要ポイントは、一回の充電でどのくらい走れるか? にあるから、この数字はそれなりに意味があるインデックスになり得るのではないだろうか?
では、さっそくTOP5を
プジョーe-2008は、ベースグレードのAllureの価格が429万9000円。バッテリー容量はe-208と同じ50kWhだが、航続距離は385kmとe-208より長い。
トヨタが限定販売したコンパクトBEV、C+podは、「1kWhいくらか」ランキングではポルシェ・タイカンに並ぶレベルだったが、「1kmいくら」では堂々の4位だ。車両価格は165万5000円。バッテリー容量が9.06kWhで航続距離は150kmとなっている。現在は買うことはできないが、2022年目途に本格販売を開始するトヨタは発表している。
3位は、日産リーフのエントリーグレード「S」。車両価格332万6400円で航続距離322kmというのは、現在のBEVのベンチマークになる数字だろう。
Model3スタンダードプラスは429万円で430km。1km=9977円で、1万円の壁を破った。
1位はまたしてもリーフe+だ。車両価格441万1000円でバッテリー容量62kWh、航続距離458kmで1km=9631円。
現在のところ、実走行での走行距離が余裕をもって300kmを超えるためには、モードでの航続距離が400kmを確保する必要がある。BEVが普及するためには、(インフラの問題を置いておいても)300-350万円程度の車両価格でモード航続距離が400km程度のモデルの登場が待たれるところだ。
つまり、
350万円÷400=8750円
1km=8750円が必要ということだ。リーフe+の現在の車両価格が441万1000円だが、これが400万円になるということを意味する。
今後、どんどん登場するBEV。まずは1km=9000円の壁を破るモデルをどのメーカーがいつ出すのか、注目したい。
こちらもリストを載せておこう。