3気筒特集を組もうと画策したときに、「なぜ3気筒なのか」をフィーチャーしたいと考えた。当然、比較対象するのは4気筒である。
「1気筒落とした」というモジュラー設計にレスシリンダーの恩恵、240度間隔によるガス交換の不干渉と過給効率——3気筒を紹介するときのこれらについては、MFiでも散々紹介してきた。3気筒をページ展開するときに、じゃあこれらの最新事例を解説する、というのではあまりにも普通すぎる。
そもそもなぜ3気筒なのか、という視点が必要だと考えた。そうすると、必要なのは「これまで4気筒で解決していたものを3気筒化するとどうなるのか」という考察である。欧米勢のレスシリンダー/ダウンサイジング化で3気筒の登場と搭載が進む中で、では車両側にはどのような工夫が新たに必要になったのか。それを、振動騒音の基本から各社の最新事例まで引っくるめて、エンターテインメントとして楽しく深く理解できる特集にしたいと考えたのが、モーターファン・イラストレーテッド174号の企画趣旨である(個人的には)。
3気筒というと、よく耳にする(?)のが偶力による振動である。すりこぎやらみそすりやら、つまり2番シリンダーを中心にエンジンが円錐を描くように動く現象で、それはなぜ起きるのかをきちんと説明したいと考えた。振動の研究をしていらっしゃる新潟工科大学の門松晃司教授に解説をいただき、理解を試みた。
・ 4気筒で起きる振動、3気筒で起きる振動、そのメカニズム
・ それらをどのように抑えるか
「数式を使うのと、イラストで視覚的に見せるのと、どちらがよろしいですか」と、取材の際におっしゃっていただいた門松先生からは、非常にていねいなご説明をいただいた。もちろん、われわれが選んだ取材スタイルは後者である(笑
加えて、前から仕組みを知りたかった三菱のサイレントシャフトについて、同社のエンジニアである北田泰造氏と堀 澄人氏にご説明を願った。4気筒の二次振動を抑えるのみならず、運転時の回転モーメントを低減する働きをも持つサイレントシャフトとは、どのような構造なのか。なぜ両得できるのか。
そして、モジュラー設計である3A9/4A9型について、3気筒エンジンを仕立てるにあたっての勘所や具体策、なぜ近年の3気筒にはバランサーが備わらないのかなど、さまざまな質問を投げかけてみた。
揺れるエンジンなのだとしたら、それを車両に載せるときの工夫とは。エンジンマウントの技術についても住友理工に取材をお願いした。近年主流とも言える液体封入式マウントから、アクチュエーターによる振動相殺を実現するアクティブマウントシステムまで、同社の最新技術を3気筒エンジンとからめてお話をうかがった。
このほかにも最新3気筒エンジンの最新事例やエンジニアリング会社による先端技術、乗用車3気筒の歴史(日本車の独擅場!)、実際の搭載車インプレッションまで、多岐にわたって3気筒 vs 4気筒を考えてみた。
振動も騒音も難しくてどうにも苦手——という方に、ぜひお手にとってご覧いただきたい。