過給ダウンサイジングが本格化する前、BMWが展開していた自然吸気+リーンバーンのシステムを振り返ってみよう。
BMWが「高精度ダイレクト・インジェクションシステム」と呼ぶ直噴システムは、最大200bar(20MPa)の高圧インジェクターをシリンダー中央部の点火プラグ近傍に置くレイアウト。噴射された細かい燃料の粒子は、複雑なピストン冠面形状に助けられ、壁面などに付着することなく、点火プラグまわりにリッチな層状混合気を形成する。プラグまわりはストイキ、混合気全体ではリーンな空燃比となる。一般にスプレーガイデッド直噴と呼ばれる方式だ。噴射した燃料によってシリンダー内に吸入される空気が冷却されるため、ポート噴射よりも吸入効率が向上。ノッキングを抑制する効果もあり、高い圧縮比を設定できる。
自然吸気エンジンに限り、これにリーンバーン技術を組み合わせたソリューションもある。点火する直前に燃料を噴射すれば良く、空気が過剰な状態でも良好な燃焼を得られる。このことを利用し、スロットルを大きく開けて、燃料噴射量に対してはるかに多い空気を吸い込みポンプ損失低減を図る。4気筒のN43型ならびに直列6気筒のN53型のB30式に採用された。同じポンプ損失低減効果を狙っているため、バルブトロニックとリーンバーンは並存しない(N53型のB25式は直噴+バルブトロニックの採用だった)。