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バイクを超越した安定感!ヤマハが開発したLMW(リーニング・マルチ・ホイール)ってなんだ?|バイクにまつわるヨコ文字・略語解説


良くわからない意味不明な文字や用語をランダムに解説して行く “用語辞典” の第三弾!今回はバイクとは思えないフォルムながら、バイク同様の乗り味を披露し、マーケットでもじわじわと広がりつつあるヤマハの3(多)輪技術を総称する略語をクローズアップしてみた。




解説●近田 茂(CHIKATA Shigeru)


PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)


協力●ヤマハ発動機株式会社

LMW とは?

Leaning Multi Wheel(リーニング・マルチ・ホイール)の略称。




 バイクの様にリーン(傾斜)して旋回する3輪以上の車両の総称である。


バイクがコーナリングする時、コーナーの内側に車体を傾けて旋回することはよく知られているが、それと同様の挙動を示す3輪以上の乗り物のことを示している。




 Multiの「M」が使われているのは、「複数の」と言う意味があり、3輪とは限らず、4輪あるいはそれ以上への可能性を込めた呼称として商標登録された。

安心感の高い走りは、タンデムでもリラックスでき、快適な乗り味を発揮する。

LMWがコミューターとしての基本機能を高める。写真はトリシティ155。
車重はそれなりに重くフォルムも圧巻のボリュームだが、スポーツバイク同様の操縦性を発揮する。写真はNIKEN。

トリシティ125やNIKENを例に少しだけ詳細解説

NIKENの前2輪間から上方を除いた写真。

 フロント左右に平行2輪、リヤ駆動が1輪の3輪ビークル(乗り物)は他にもあるが、量産のバイクで車体全体を傾けてコーナリングするタイプは受注生産ながらもヤマハのNIKENが世界初である。


 スクータータイプではピアッジオMP3が先行し、滑りやすい路面状況が多い欧州で確かな人気を獲得。ヤマハのトリシティがそれに追随した形となる。


 車体の前半分(乗車部)が傾く3輪ビークルとしてはホンダのストリームに始まり、現在は電動モデルも登場しているジャイロの活躍がよく知られているが、これは3輪のレイアウトが逆パターンであり、車体全体が傾くと言う点で、LMWは全く別の仕組みで構成されている。


 車体や車輪をコーナーの内側に傾けて旋回する仕組みについての技術研究は、4輪メーカーも含めて以前からいくつかの開発例があるが、革新的モデルとして普及に弾みを付けたと言う点でLMWの功績は大きいのである。


 前2輪のレイアウトは何よりも強力な制動力を発揮。しかもトリシティやNIKENは、バイクと何ら変わることのない操縦操作性を訴求(バイクライダーにも親しみやすい存在に)することから始め、トリシティ300ではスタンドアシストを採用する等、徐々に便利な乗り物としての素養も披露。将来的には社会で広く受け入れられる新しい乗り物への発展性も期待されている。

LMWの主要構造は、ステアリングヘッドより前方部分に集約されている。

仕組み

 通常のバイクは、ステアリングヘッドパイプ部に三又と呼ばれるステアリングブラケットがあり、ヘッドパイプを中心に左右へ舵が切れる構造を持つ。上下ブラケット部分の左右端でフロントフォークを支持し、伸び縮みするクッションのついたテレスコピッックフォークの下端で前輪車軸(アクスル)の両脇を支持しているのが一般的。


 LMWではステアリングヘッドパイプの前方に独自のメカニズムが採用されている。その主要部品が「パラレログラムリンク」である。


 シーソーの様に動く可動メンバーが横方向に上下2本(正確には4本)レイアウトされ、両サイド部分で左右のフロントフォーク上部を支持している。


 写真からもわかる通り、同リンクが動くと、上下左右の支持部が平行四辺形を描くように動くのが特徴的。


 フロントフォークは前後配列のダブルタイプで左右前輪それぞれの内側を片支持する方式。路面からの衝撃は実質的に左右独立した入力となり、シーソーの動きはサスペンションとして機能するメリットがある点も見逃せない。

⬆️これが、現在のLMWに採用されているパラレログラムリンク。シーソーの様に動くアームが上下2段に渡ってレイアウトされ、左右輪それぞれのフロントフォークを支持している。➡️ちなみに内側から左右両(前)輪を片支持するフロントフォークはタンデムツイン方式だ。

●補足


 前の2輪が接地するポイントは、左右それぞれ異なるのが普通。仮に片輪が滑りやすい所を通過しても、もう片方の車輪は確かなグリップが得られるケースがほとんど。前(2)輪の優れた接地力が確保され、安定性が高い。2輪故のグリップ力に頼り甲斐があり、制動性能は抜群。横風安定性も高く、乗り味には安心感がある。


 もう一つ見逃せないメリットは、フロントフォークのクッションが、パラレログラムリンクを介して左右分がプラスされるのでサスペンションは倍のストロークを活用できる事がある。構造上路面からの振動も緩和され、乗り心地がとても良い。


(注・段差を直角に乗り上げる様な、左右輪が同時に乗り上げる時、このメリットは期待できない)


 現在、ヤマハのLMWは3輪で4機種展開されているが、プロトタイプでは4輪モデルの研究開発も行われている。バイク然としたモデルから、未来的コミューターまで、今後の発展が期待されている。

スリッピーな場面でも安心感は高い。
段差の乗り越えも難なくクリアでき、その衝撃も少ない。
NIKENとは異なる構造を採用したLMW(4輪タイプ)試作実動モデルだ。
NIKEN発表会場のエントランスに展示されていた試作車の「MWC4」は、エンジン発電、モーター駆動のハイブリッド・ビークル。

ヤマハLMW技術解説動画
●用語解説こぼれ話


 トリシティ登場当初、特にブレーキ性能の高さに驚かされた。抜群の進化と安全性の高さは心から評価・賞賛できるものと理解したのだが、メーカー側は嬉しい反面、痛し痒しの様子。3輪のメリットを訴求すると、2輪の性能レベルを否定する事に成りかねないという気持ちが作用していたようだ。筆者としては、事実として両車の性能差を冷静に把握。もちろんそれぞれの価値(優劣)を左右するものでは無いと思っている。
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