良くわからない意味不明な文字や用語をランダムに解説して行く “用語辞典” の第三弾!今回はバイクとは思えないフォルムながら、バイク同様の乗り味を披露し、マーケットでもじわじわと広がりつつあるヤマハの3(多)輪技術を総称する略語をクローズアップしてみた。
解説●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
協力●ヤマハ発動機株式会社
LMW とは?
Leaning Multi Wheel(リーニング・マルチ・ホイール)の略称。
バイクの様にリーン(傾斜)して旋回する3輪以上の車両の総称である。
バイクがコーナリングする時、コーナーの内側に車体を傾けて旋回することはよく知られているが、それと同様の挙動を示す3輪以上の乗り物のことを示している。
Multiの「M」が使われているのは、「複数の」と言う意味があり、3輪とは限らず、4輪あるいはそれ以上への可能性を込めた呼称として商標登録された。
トリシティ125やNIKENを例に少しだけ詳細解説
仕組み
通常のバイクは、ステアリングヘッドパイプ部に三又と呼ばれるステアリングブラケットがあり、ヘッドパイプを中心に左右へ舵が切れる構造を持つ。上下ブラケット部分の左右端でフロントフォークを支持し、伸び縮みするクッションのついたテレスコピッックフォークの下端で前輪車軸(アクスル)の両脇を支持しているのが一般的。
LMWではステアリングヘッドパイプの前方に独自のメカニズムが採用されている。その主要部品が「パラレログラムリンク」である。
シーソーの様に動く可動メンバーが横方向に上下2本(正確には4本)レイアウトされ、両サイド部分で左右のフロントフォーク上部を支持している。
写真からもわかる通り、同リンクが動くと、上下左右の支持部が平行四辺形を描くように動くのが特徴的。
フロントフォークは前後配列のダブルタイプで左右前輪それぞれの内側を片支持する方式。路面からの衝撃は実質的に左右独立した入力となり、シーソーの動きはサスペンションとして機能するメリットがある点も見逃せない。
●補足
前の2輪が接地するポイントは、左右それぞれ異なるのが普通。仮に片輪が滑りやすい所を通過しても、もう片方の車輪は確かなグリップが得られるケースがほとんど。前(2)輪の優れた接地力が確保され、安定性が高い。2輪故のグリップ力に頼り甲斐があり、制動性能は抜群。横風安定性も高く、乗り味には安心感がある。
もう一つ見逃せないメリットは、フロントフォークのクッションが、パラレログラムリンクを介して左右分がプラスされるのでサスペンションは倍のストロークを活用できる事がある。構造上路面からの振動も緩和され、乗り心地がとても良い。
(注・段差を直角に乗り上げる様な、左右輪が同時に乗り上げる時、このメリットは期待できない)
現在、ヤマハのLMWは3輪で4機種展開されているが、プロトタイプでは4輪モデルの研究開発も行われている。バイク然としたモデルから、未来的コミューターまで、今後の発展が期待されている。
●用語解説こぼれ話
トリシティ登場当初、特にブレーキ性能の高さに驚かされた。抜群の進化と安全性の高さは心から評価・賞賛できるものと理解したのだが、メーカー側は嬉しい反面、痛し痒しの様子。3輪のメリットを訴求すると、2輪の性能レベルを否定する事に成りかねないという気持ちが作用していたようだ。筆者としては、事実として両車の性能差を冷静に把握。もちろんそれぞれの価値(優劣)を左右するものでは無いと思っている。