日本車勢がそうだったように、1970年代のイタリアの2輪メーカーは、世界進出を前提としたビッグバイクを次々と発売した。その時代に生まれた旧車を主な対象とするイベントが、2020年に第7回目を迎えたラウンドミーティングだ。
REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)
ミイラ取りがミイラ……を地で行くような展開だが、仕事を通して知り合ったラウンドガレージの矢部啓二さんに影響を受ける形で、僕は数年前に1974年型モトグッツィV850GTのオーナーになった。もっとも、僕は昔から旧車全般が大好きで、いつかはモトグッツィの縦置き90度Vツインを所有したいと思っていたのだが(十数年前に同社の水平単気筒車、1957年型アイローネを所有したことはある)、古いイタリア車のメカニズムに精通した矢部さんが手を入れた車両でなければ、購入には踏み切れなかっただろう。なおラウンドガレージのスタンスは、あくまでも仲間の愛車の面倒を見る拠点で、一般ライダーに広く門戸を開いた旧車専門店というわけではない。
さて、そんなラウンドガレージが毎年秋に開催しているイベントが、1970~1980年代のイタリア車を中心とした“ラウンドミーティング”だ。2020年はコロナ禍の影響で参加者が少なかったものの、それでもメンバーは年に1度の趣味人の集いを存分に満喫。宿泊場所となったリゾートホテル蓼科では、全員がソーシャルディスタンスに配慮しながら、愛車談義に花を咲かせていた。
僕がいつもこのイベントで面白いと思うのは、道中のサービスエリアや道の駅での異質感、あるいはセレブ感である。当然ながらそういった休憩ポイントでは、2輪用があれば2輪用、無い場合は手ごろなスペースに各人が駐車をするのだが、まず古き良き時代に生まれたイタリア車が、近年の2輪&4輪と同じように並んでいる姿が異質。そして参加者の愛車の合計金額が、現在の相場だと5000万円以上!という事実を考えると、こんなところに普通に停めていいんだろうか?という気がして来るのだ。
もっとも、ラウンドミーティングの参加者のほとんどはセレブではない。中にはそういう方もいるはずだが、多くのメンバーはイタリアンクラシックの価格が高騰する前に愛車を入手し、しかも購入時には不動&欠品多数というケースが多く、まともに走れるようになるまでには、相当な苦労と出費を強いられている。逆に言うならメンバーの大半が、自身の愛車の構造とコンディションを理解しているから、休憩や夕食時の会話では、他ではなかなか聞けない面白い話がバンバン出て来るのである。
もちろんこのイベントのハイライトは、参加者全員で走る蓼科周辺のワインディングだ。縦置き90度Vツインに加えて、横置き90度ツインのベベルドゥカティやパラレツインのラベルダ、横置き72度Vツインのモトモリーニ、並列4気筒のMVアグスタなどの快音を聞きながら走る高揚感と言ったら、それはもう最高!のひと言。この感触は現行車や単一機種の旧車イベントではなかなか得られない、ラウンドミーティングならではの特徴だろう。
なお1980年代以前のイタリア車と言うと、気難しいとか壊れやすいというイメージを抱く人が多いようだが、整備が行き届いたラウンドミーティングの参加車に、そういった気配は希薄。市販レーサー的なキャラクターのドゥカティ750SSやラベルダ750SFCも含めて、どのバイクも至って普通に走るし、致命的なトラブルはめったに発生しない。もっとも休憩時には、スパークプラグの焼けやエンジンオイルの量を確認したり、緩みやすいボルト&ナットの増し締めを行ったりという光景が各所で展開されるのだが、そういった作業を面倒と感じる人は、ラウンドミーティングのメンバーにはいないようだ。
前述したように、ラウンドガレージは一般に門戸を開いたショップではない。とはいえ、年に1度のラウンドミーティングを含めて、ツーリングイベントの参加者は常時募集しているので、興味のある方は事務局を務める日丸さん(himaruyouichi@softbank.ne.jp https://www.facebook.com/youichi.himaru)に連絡を取っていただきたい。