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2020年MotoGPを振り返る/新型コロナが及ぼした影響とは。


 MotoGPに限らず、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響が各所に及んだ年だった。MotoGPも様々な変更を迫られ、感染防止のための対策がとられた。ここでは新型コロナが、2020年シーズンのMotoGPにどのような影響を与えたのかを振り返る。


TEXT●伊藤英里(ITO Eri)


PHOTO●Honda Team Asia、MICHELIN、MotoGP.com

 MotoGPのレースカレンダーは新型コロナウイルス感染症の影響によって大きな変更を迫られた。2月上旬にマレーシアで行われたMotoGPクラスの公式テストは、通常通り実施。しかし、それ以降、状況は大きく変わった。3月上旬に予定されていたのは開幕戦カタールGPだったが、このときカタールへの入国が制限され、イタリアからの渡航者に対し検疫措置が取られることになった。MotoGPクラスにはイタリア人ライダーはもちろんのこと、イタリア人の関係者もいる。彼らがカタールGPまでにサーキットに到着することが難しい状況となったのである。このため、MotoGPクラスは開催中止。直前の2月下旬に同地でテストを行い、そのまま滞在していたMoto2クラスとMoto3クラスのみの開催となった。




 この開幕戦カタールGPでは、Moto2クラスで長島哲太(Red Bull KTM Ajo)が劇的な優勝を飾ったことを付け加えておきたい。長島にとって、Moto2クラス初の勝利だった。さらに、このカタールGPでは、Moto3クラスで小椋藍(Honda Team Asia)が3位表彰台を獲得している。小椋は今季、最終戦までタイトル争いを繰り広げたが、そうした期待を感じさせる初戦での表彰台獲得だった。感染症拡大に、次第に不安が広がっていく中、日本のMotoGPファンにとってこうした日本人ライダーの活躍は、陽光の射すような明るいニュースだったはずだ。

開幕戦カタールGPで、Moto2クラス初優勝を飾った長島

Moto3クラスに参戦する小椋(写真右)はカタールGPで3位表彰台を獲得

 カタールGP以降、MotoGPは世界的にまん延する新型コロナの影響により、開催延期。再開されたのは、7月中旬。MotoGPクラスのライダーは2月の公式テストから約5カ月もの間、“STAY HOME”を余儀なくされたのだ。余談ではあるが、こうした中でもMotoGPではMotoGPのゲームソフトでのレースが開催されたり、SNSを通じて積極的に写真や動画を配信するチームやライダーもいた。日本でも、動画配信などを通じて、ライダー同士の対談などの企画が催されていた。コロナ禍でありながら、SNSが発展している現代だからこそ、新たなファンとの交流の在り方が生まれていたように思う。




 さて、7月中旬にスペインで再開されたMotoGPは、レース数が変更された。全20戦が予定されていた2020年シーズンは、全15戦(MotoGPクラスは14戦)での開催。日本を含むいくつかのグランプリは中止となり、7月の再開以降はヨーロッパのサーキットでのみ開催された。




 さらには11月下旬までの間に14戦を行うため、3連戦が続いた。その連戦の中でも、同じサーキットでの2連戦が組み込まれたのは今季の特徴だ。この過密日程には身体面でタフなシーズン、というコメントが散見された。レーシングライダーたちにとっても、大変なスケジュールだったようだ。




 また、当然ながら感染防止の対策が数多くとられた。たとえば、パドックに入ることができる人数は制限され、無観客で開催されたグランプリもあった。ライダーはもちろん、現地の関係者はマスクやフェイスシールドなどを着用。握手の代わりにこぶしを合わせ、常にソーシャルディスタンスを確保した体制でのレースウイークとなっていた。食事も通常はホスピタリティと呼ばれるスペースで温かい食事が提供されるのだが、チームによってはランチボックス形式だったという。

記者会見でもソーシャルディスタンスが保たれ、ジャーナリストとの質疑応答はオンラインで交わされた

MotoGPでもマスクやフェイスシールドの着用は欠かせないものとなった

 異例のシーズンとなった2020年は、状況を踏まえてコスト削減が図られ、技術規則が改定された。なかでも大きな変更点は、エンジンについてである。2020年シーズンについては、コンセッションを受けるメーカーもエンジンを含むアップデートはなし。コンセッションを受けないメーカーについては、2021年シーズンも2020年仕様のエンジンで戦うことになった。




 これについては少々補足を加えたい。現在、MotoGPクラスではコンセッションと呼ばれる優遇措置がある。通常のシーズンであれば、コンセッションを受けているメーカーはシーズン中のエンジンのアップデートが可能などの優遇が得られる。




 コンセッションを受けるのはアプリリア。2020年シーズン開始当初にコンセッションを受けていたKTMは、シーズン途中に条件を満たしたためコンセッションを外れたが、2021年シーズンが始まるまでには新たなエンジンを投入可能。一方、ドゥカティ、ヤマハ、スズキ、ホンダの4メーカーはコンセッションを受けないため、2021年シーズンは2020年仕様のエンジンでシーズンを戦う。こうした状況が2021年シーズンにどのような影響を及ぼすのか、興味深いところではないだろうか。




 新型コロナがMotoGPに及ぼした影響は小さくはない。しかし同時に、2020年シーズンのMotoGPのおもしろさは、それに影響されないものだった。




※ライダーの所属として記載しているチーム名は2020年シーズンのもの。

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