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マツダのSKYACTIVエンジンのシリンダーヘッドは高精度の砂型鋳造で作られる 全量砂型鋳造で造るのはマツダだけ


マツダのSKYACTIVエンジンのシリンダーヘッドは、マツダが独自に開発した低圧砂型鋳造技術であるAPMCによって製造されている。全量砂型鋳造しているメーカーは、世界でマツダただ一社なのだ。

こちらが完成したSKYACTIV-Xエンジンのアルミ合金製シリンダーヘッド

そのシリンダーヘッドを鋳造するのに使われる3分割された砂型がこちら。

現在の市販用エンジンの大半がアルミ合金製シリンダーブロックと同じくアルミ合金製シリンダーヘッドを使っている。その作り方は当然鋳造だ。溶かしたアルミ溶湯(ようとう)を金型に流し込む金型鋳造(いわゆるダイキャスト)が主流である。




いっぽう、レーシングエンジンや一部の高性能エンジンでは、砂型を使った鋳造が行なわれている。

この砂型とは、特殊な砂に樹脂を混ぜてつくった型だ。シリンダーヘッドのような複雑な形状を成形するには、「中子(なかこ)」も砂型で作り、組み合わせて砂型とする。砂型は金属型と違ってアルミ溶湯がゆっくり固まるため、複雑な形状や薄い壁状の部分を鋳込むのに適している。




マツダは量産自動車メーカーとして世界でただ一社、シリンダーヘッドをすべて砂型鋳造で作る。ガソリン1.5ℓ直4エンジンのSKYACTIV-G1.5も、2.2ℓ直4ディーゼルのSKYACTIV-D2.2も、最新のSKYACTIV-Xもシリンダーヘッドは砂型鋳造で作られるのだ。

左が一般的な低圧鋳造(LPD)。LPDとマツダ独自のAPMCの違いは金属組織の緻密さに大きく現れる。AMPCでは高密度な鋳造が可能なため、肉厚をより薄くできるのだ。

マツダ独自の砂型鋳造技術はAPMCと呼ばれている。Advanced Precision Mazda Casting processの頭文字をとった手法で、そのルーツはコスワースDFVに遡る。F1などのモータースポーツ用エンジンとして一世を風靡したコスワースDFVは名機中の名機である。マツダはフォードと資本提携していた関係からコスワース鋳造と呼ばれる砂型鋳造を学んだ。




2001年にマツダとフォードは共同でコスワース鋳造を開始、マツダはこれを独自に進化させたわけだ。




2013年に取材したときも、もちろん高精度な砂型鋳造ですべてのSKYACTIVエンジンのシリンダーヘッドは製造されていた。


2020年に『MFi特別編集マツダの最新テクノロジー』(12月26日発売)の取材で訪れたときに見せてもらった砂型鋳造は、SKYACTIV-Xエンジンを造るために、さらに精度を上げていた。

砂に樹脂を混ぜて作られる複雑な形状な中子は、一見華奢に見えるが、手に持つも意外に丈夫だ。すべての砂型は一度しか使えない。シンターヘッド1基を作ったら壊される。

ウォータージャケット部分の中子は、このように重ねられる。

SKYACTIV-Xのシリンダーヘッドはとにかく寸法精度が要求される。そのために、SKYACTIV-Gでは一体だった中子を3分割で作り、さらに200ミクロン程度のクリアランスを持たせた状態で中子を設計し、溶湯が注ぎ込まれたときの「伸び」に対して余裕を持たせた状態で成形するようにしたというのだ。




砂型鋳造は贅沢な製造方法だった。これをすべての量産エンジンに適応するのは、マツダだけだ。マツダがコスワース鋳造をベースに独自方法でチャレンジしたとき、肉厚は4mm程度が精一杯だった。SKYACTIV-Xではそれが2.5mmになった。




SKYACTIV-Xは、こうした製造技術によって造られているのである。

機械加工を施されて完成したSKYACTIV-Xのシリンダーヘッド。機械加工されていない部分は砂のような地肌が残っている。

マツダの最新テクノロジーを徹底取材して1冊にまとめたMFi特別編集『マツダの最新テクノロジー』が12月26日に発売されます。


砂型鋳造についても、さらに詳しくレポートしています。ぜひご覧下さい。

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